「ちょこれーと?」
「そう。バレンタインはね、女の子が好きな男の子に、チョコレートをプレゼントする日なの」
「へえー。温子伯母さんって、本当に物知りなんだね!」
何故か私の言葉に、温子伯母さんは悲しそうな顔をする。どうしてだろう?
バレンタインって、普通は誰でも知ってるような事だったのかな?
「…七海」
「なぁに?」
「ごめんなさい。本当なら、あなたも大好きな人にチョコレートをあげられるはずなのに…」
「そんな…温子伯母さんが悪い訳じゃないよ! それに、バレンタインなんてとっくに過ぎてるんだし…」
ヤだ。温子伯母さん、瞳に涙を浮かばせてる。
大好きな温子伯母さんが泣いていると、私まで悲しくなっちゃう…。
ええと、何とかして話題を変えなくちゃ。
「あ、あの。温子伯母さん。その、ちょこれーとってどんなお菓子なの?」
あ、しまった。話題を変えようと思ったのに、結局バレンタインに関係する話題を振っちゃったみたい。
けれど温子伯母さんは呆気に取られた顔をして、
「七海は…チョコレートを食べた事が無かったかしら?」
「え? う、うん」
私は目の前に置いてあるお饅頭を見て、言った。
私は甘い物が大好きだから、温子伯母さんはよくお菓子を持ってきてくれる。
けれどそれは、和菓子っていう種類の物が多いみたい。
この前、7月の終わり頃(確か29日)にケーキを持ってきてくれた事があったけれど、チョコレートは食べた事がない。
「そう…。じゃあ、明日のおやつはチョコレートにしましょうか」
「ホント!?」
私、すっごく嬉しかった。
明日がとっても楽しみ! チョコレートって、どんな味がするんだろう!?
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