秘密のParty Party
「眠れないのか?」
耳元でささやかれる声。
「うん…ちょっと考え事をしてて」
ボクは彼の腕枕に頭を乗せたまま、彼の方へと首を向ける。
窓からそそぐ星の光で、うっすらと彼の微笑みが見えた。
「何を考えてたんだ?」
「うん…ずっと考えていたのだけれど、やっとどうするか決めたよ」
「どうするか…って?」
慎吾君の影が少し動く。
「うん。今日のお誕生日のお礼をしたくて…その方法を考えていたんだ」
「いや、お礼なんかいいよ」
「ダーメ、絶対お礼するんだから」
ボクが慎吾君に抱きついて言うと、彼は少し困った口調で返事をする。
「NANA…暑いんだけど。夏なんだし…一緒に寝る事ないだろ?」
「慎吾君と一緒なら、ボクはどんなに暑くたって平気だよ」
「…そうか。で、NANAの考えたお礼っていったい何だ?」
「えへへ…それはね」
少し間をおいてじらせてから、彼の耳元に口を寄せてささやく。
「今度のキミのお誕生日には…ボクがパーティーの準備をするよ」
彼のちょっぴり驚いた顔、そして嬉しそうに笑った顔が、暗闇の中でもはっきりと見えた。
「NANA…ありがとう」
「えへへ…お誕生日、楽しみに待っててね」
「ああ」
今度はボクの番。
ボクが慎吾君に幸せを上げるんだ。
だから――。
「慎吾君のお誕生日はいつなんだい?」
一瞬の沈黙の後。
「…20日」
「20日? 何月の20日なの? 8月?」
「…7月」
つまり慎吾君のお誕生日は…。
「…7月20日?」
「…ああ」
「…………」
「…………」
「…って、もう9日も前に過ぎてるじゃないかぁーっ!?」
夜中だという事も忘れて、ボクは大声で叫んだ。
「…そうだな」
「ど、どうして教えてくれなかったのさっ!?」
「いや…その時にはもうNANAの誕生パーティーの準備始めてて…すっかり忘れてた」
「そ、そんなぁ…」
「あ〜…その、えーと…元気出せよ」
「せっかくお祝いしようと意気込んでいたっていうのに…お誕生日は1年も先じゃないかっ!!」
「そういう事になるな」
慎吾君はあきらめたように呟く。
「うう…こうなったら今から1年、どんなパーティーを開くか悩みに悩み抜いてやるんだからっ!」
「…気の長い話だな」
「仕方ないだろうっ!? ボクだって…キミのお誕生日をお祝いしたいんだからーっ!!」
こうしてボクは、1年後に慎吾君の誕生パーティーを開く事をかた〜く決意した。
慎吾君の誕生日…絶対にあきらめないんだからねっ!
そして、物語は1年後に――続くはずもない
おしまい?
この作品をNANAへの誕生日プレゼントとして捧げます。
SUMI様
深夜の出来事、もしくは夢
「本当に…これでよかったのか?」
視界は暗闇に支配され、まどろむ意識の中、聞こえるのは虫の鳴き声と慎吾君の声。
これは夢? それとも現実?
どちらなのかよく解らない。
「ああ…NANAは喜んでたよ。温子さんからのプレゼントだって、喜んでた」
夢の中でも慎吾君の声が聞けるなんて、今日は本当に幸せな日。
「…解ってる、NANAには言わないよ。温子さんも黙っててくれるだろうけど」
彼の声は心がやすらいで、まるで子守歌のよう。
「いつか…いつか勇気が持てたら、今度は自分の手でプレゼントを渡してやれよ」
気持ちがいいな…。
「大丈夫、NANAはお前を受け入れてくれるさ」
かすかな意識が遠のき、ボクは再び深い眠りへと落ちていく。
「だって、お前とNANAは……」
夢の続きでボクは天使の腕輪と、温子伯母さんからもらった真っ白なワンピースを着ていた。
そして慎吾君と一緒に、晴れわたった青空の下を歩いていた。