ハッピーバースディ

ハッピーバースディ



「う〜む……」
 夏休み真っ盛りな7月28日、慎吾はクーラーも点けないで、一人部屋でうんうん唸っていた。
「……何も思い浮かばん……」
 あっさりと敗北宣言をする。
 というか夏真っ盛りにクーラーも点けないでうんうん唸ったところで、何か思いつくなど限りなく低い。
 むしろ危険だ。
「慎吾〜」
 声が聞こえたかと思うと、勝手にドアを開けられる。
「熱ゥッ!!!」
「なんか用か姉貴」
 勝手にドアを開けた姉―夏美―にうっとおしいとばかりの視線を投げかける。
「あんたこんなクソ熱い(誤字にあらず)部屋で何やってんのよ?」
「姉貴には関係ない」
「話しなさい。つーか話せ」
 アイアンクローを極めながら、さわやかな笑みで脅され、慎吾はあっさりと理由を話した。
「なるほど、プレゼントね。ならこんな所にいないで外に行きなさい」
「えっ?」
「こんな所にいても良い物なんて思い浮かばないわよ」
 そう言いながら、慎吾を蹴り出しにかかった。


「……外に行ってもあまり変わらないような……」
 夏美に蹴り出された後、慎吾はぶらぶらと町を歩いていた。
「まあ、何か良い物が見つかるかもな」
 そう決めると、慎吾は商店街へ向かう。
「ん?」
 商店街に向かう途中、一件のアンティークショップを見つけた。
 なぜか不思議な感じがして、慎吾は吸い込まれる様に店内へと入っていった。
 カランカランと鐘の音が響き渡る。が、人のいる気配はせず、不思議に思いながら慎吾は店内を歩き回る。
「いらっしゃいませ」
「!?」
 急に後ろから声をかけられ、驚いて振り返ると、そこには自分と同じぐらいの女の子が立っていた。
「ゆっくりして行って下さいね」
「あ、はい」
 そう言うと女の子は店の奥へと消えていった。
 そして慎吾もプレゼントを探し始め、対のペンダントを買うことに決めたのだった。


―翌日―


「誕生日おめでとう!」
『おめでとう!』
 美月が音頭を取り、皆が後に続く。そして祝福の言葉を言い、NANAと七瀬にプレゼントを渡していく。
 ライムは、七瀬にコナをかけていたが。
(ちなみに会場は温子の家。今日の誕生日パーティーに呼ばれたのは慎吾、美月、澪、若菜、花梨、太陽、光。企画したのは美月である)
「で、本命は何を持ってきたのかな?」
「本命って…」
「だって本命じゃない」
 ニヤニヤしながら言う美月に、慎吾は渋面を浮べる。
「あー、俺のプレゼントはこれだ」
 ぶっきらぼうに慎吾はプレゼントを渡す。
『ありがとう、慎吾くん』
 まるで打ち合わせをしていたかのように、同じタイミングで、慎吾に満面の笑みを浮かべてお礼を言う。
「プレゼントも渡し終わったし、そろそろパーッと行きましょ!」


「今日はありがとう。スッゴク楽しかったわ」
「こっちもそんなに喜んでくれるなんて企画してよかったわ」
「それじゃ、またね」
 美月と澪が、NANAに別れを告げる。
「じゃ、俺も…」
「待って!」
「何だ?」
「あの、もうちょっとだけ話がしたいの……」
 もじもじしながら上目遣いで慎吾を見つめる。もちろん断ることなどできず、二つ返事で了解する。
「あれ、慎吾くん帰るんじゃ……」
「私がもう少し話がしたいって言ったら、いいって言ってくれたの。七瀬も話したいでしょ?」
「うん!」
 その後、三人は世間話や慎吾の昔の話など、色々な事を話し合った。
「ねえ、プレゼント開けていい?」
「ああ」
 二人が慎吾からもらった包みを開ける。
「わあ!綺麗なペンダント……」
「ありがとう慎吾くん!」
「いや、気に入ってもらえて何よりだ」
「ねえ、慎吾くん。今、慎吾くんが着けてくれないかな?」
「あっ、僕も!」
「はいはい」
 子犬の様に甘えてくる二人に苦笑しながら、慎吾はペンダントを着けてやる。
「ね、今日泊まっていってよ」
「NANA、何言って…」
「いいでしょ、私達の誕生日なんだから」
「そうそう」

 慎吾は溜め息を吐くが、二人のお願い(と言うか甘え)に首を縦に振る。その光景を、温子は微笑ましく見ていた。


 翌日、慎吾は泊まってきた為に、夏美に散々からかわれる事となった。



あとがき
設定はこうなってます。

夏美……慎吾の姉。
慎吾をからかうのが生きがい。けど抑えるところは抑えてる。
温子……NANAと七瀬の保護者。
理由はNANAと七瀬が普通にしてたら、親父はともかく母親は絶対に心配するだろうから、頼まれたと言うことで。

完全にオリジナル化してます。
でも好きなんです、七瀬と温子さん。
ちなみに謎のアンティークショップはもしかしたらまた出るかもしれません。
白昌様