サンタの秘密はユメのナカ?




「ねえ、起きてる?」
 NANAの呼びかけで、俺は浅い眠りから覚めた。
「ああ」
 瞼を開いたけど、視界は真っ暗なままだった。
 何度か瞬きをして、さらに目をこすり眠気を追い払う。
 声は二段ベッドの上から…ではなく、すぐ横から聞こえた。
 暗闇の中、ベッドの横に立つ人影の方へと首を向ける。
「どうした、眠れないのか?」
「う、うん…あのさ、そっちに行ってもいいかな?」
「別にかまわないけど…」
 俺が言い終えると、すぐにNANAはベッドの中に入ってきた。
 布団をめくられ、冷たい空気が入り込み、すぐにあたたかいNANAの身体が入ってくる。
 NANAはギュッと俺にしがみつき、柔らかな胸が押し付けられNANAの鼓動が伝わってきた。
 俺はそっと腕を差し出し、NANAの頭の下に潜り込ませる。
 こうやって腕まくらをしてやると、朝は決まって腕が痺れてしまう。
 布団の中でNANAがもぞもぞと身体を動かし、俺の足に自身の足を絡めてきた。
「えへへ…慎吾君の身体、とてもあたたかいよ」
「NANA、もしかして寒かったのか?」
「うん、ちょっとね。それに…明日から冬休みでしょ? だから少しでも慎吾君と一緒にいたくて…」
「NANA…」
 か、可愛い…。可愛すぎるぞ、NANA。
 多分、俺の顔は真っ赤に染まっているだろう。暗くて助かった。
 少しでも一緒にいたいっていうNANAの気持ちは嬉しいけど…ちょっとくっつきすぎじゃないか?
 NANAの息遣いも、鼓動も、ぬくもりも、全て伝わってくる。
 眠気が完全に消え去ってしまった。
「クリスマス、楽しみだね」
「あ、ああ…」
 俺の声がちょっと震えていたのを不思議に思ってか、NANAの顔が少し近付いてきた。
「そ、そうだNANA。クリスマスプレゼントは何が欲しいんだ?」
「クリスマス…プレゼント?」
 俺の言葉が意外だったのか、NANAは考え込んでしまった。
 しばらくして、NANAが軽い口調で言った。
「そんなのいらないよ。だって、ボクは慎吾君と一緒にいられるだけで幸せなんだもの」
「そ、そうか。でもさ、せっかくのクリスマスなんだし…。サンタクロースにプレゼントをお願いくらいしてもいいんじゃないか?」
「アハッ、そうだね。でもボク、サンタさんからプレゼントなんてもらった事ないし、頼んだ事もないから」
「…え?」
「あ、その、ホラ。ボク…ずっとクリスマスなんて知らなかったし、
 サンタさんにプレゼントをお願いした事もなくて、それで…」
 NANAは慌てて言葉を取り繕った。
 プレゼントの事を全然気にしてないから、とでも言うかのように。
 NANAの事だから、きっとサンタクロースも信じてるんだろうなぁ…。
「でもさ、NANA。今年はサンタさんからプレゼントもらえるかもよ?
 NANAだったらサンタクロースに何をお願いするんだ? よかったら教えてくれよ」
「慎吾君とずっと一緒にいさせて下さいっ!」
 きっぱりとNANAは答えた。
 俺は思わず黙りこくり、少し痺れかけた腕を曲げてNANAの頭を撫でる。
「えーと、そういうプレゼントじゃなくて…もっと具体的なさ、何かないかな? 服とかアクセサリーとか、そういうのだよ」
「服かぁ…慎吾君とペアルックとかしてみたいな」
「いや、そういうんじゃなくて…他に欲しい物とかないのか? その…」
 俺はNANAになんと説明すればいいか、すっかり悩み込んでしまった。
 あまり露骨に訊いては、俺の計画がバレてしまうかもしれない。
 NANAは俺の意図が解らず、首をかしげているようだ。
 そしてNANAの小さな願いが、そっと沈黙を破った。
「ボク……」






サンタの秘密はユメのナカ?