サンタの秘密はユメのナカ?
私ね、七瀬と2人きりになれて…最初はとても緊張してしまったわ。
でもしばらくすると、慎吾君とお話をするように…自然に話せるようになったの。
すっごく楽しかった。
だから私、慎吾君にとても感謝してる。
そしてサンタさんにお願いしたの。
私は何もいらないから、その分…慎吾君にプレゼントを上げてくださいって。
でもね、サンタさんたら意地悪なの。
結局サンタさんは慎吾君に何もプレゼントをしてくれなかった…。
サンタさんは、私と七瀬の所にだけ来ちゃった。
ねえ慎吾君、サンタさんはどんな格好をしていると思う?
やっぱり真っ赤な帽子と服を着た、真っ白なおひげのおじいさんかな?
私もね、そうだと思ってたの。
でも、違った。
私の所にやってきたサンタさんは、ちょっぴりおっちょこちょい。
七瀬のベッド脇にある電気スタンドを倒しそうになって、大慌て。
そしてサンタさんは、私と七瀬の枕元にプレゼントを置いて行ってくれたの…。
「うふふ。最初、とても驚いてしまったわ。まさか、本当にサンタさんがいただなんて…って。
慎吾君は、私がまだサンタさんを信じてるって思っていたのかな?
そうだとしても、仕方ないよね。私…すっごく世間知らずなんだもの。
でも温子伯母さんが持ってきてくれた漫画や、インターネットを通じて見た世界で、
サンタさんはいないって…ちゃんと知ってたのよ?」
漫画に登場する小さな女の子は、ある日クラスメイトのお友達とケンカをしてしまうの。
友達にサンタさんを信じている事を、馬鹿にされて。
それでね、主人公は女の子のお兄さんなんだけど…そのお兄さんはクリスマスの夜、ある事をするの。
真っ赤な帽子と服を着て、真っ白な偽者のおひげを着けて、サンタさんの振りをして、妹にプレゼントを渡すの。
女の子はすっごく喜んだわ。サンタさんが本当にいたのだと解って。
でもね、女の子は気付いちゃうの。サンタさんの正体が…自分のお兄ちゃんだって。
女の子はそこで、本当はサンタクロースなんていないんだ…って解っちゃうの。
でもね、女の子はサンタさんの振りをしたお兄さんに感謝するの。
そして女の子はクラスメイトのお友達に、サンタさんはやっぱり本当にいたんだって言うの。
お友達は女の子の言う事を信じなかったわ。
すると、女の子は自信満々に言うの…。
私のサンタクロースは、私のお兄ちゃんだ…って。
「ねえ慎吾君。とっても素敵なお話だと思わない?」
私はゆっくりと腰を折った。
唇を彼の耳元に近づけて、囁く。
「夢の中で私の所へやって来たサンタさんは、可愛いセーターを着ているの。
大切なお友達の想いがこもった、とっても可愛くて素敵なセーターを…」
彼の唇が小さく動き、ムニャムニャと声にならない呟きを漏らした。
「ねえ慎吾君。私…そのサンタさんにお礼がしたいなって思っているの」
唇を、耳元から頬へとずらす。
「…ありがとう。大好きだよ…」
――チュッ。
小さな音の後、私達の座席へ向かって足音が近づいてきた。
「おかえりなさ〜い」
「ただいま」
足音の主は、私の可愛い弟。
トイレから戻ってきた七瀬は、元の席に座って慎吾君の寝顔を覗き込んだ。
「慎吾さん、まだ眠ってるんだ」
「ゆっくり眠らせて上げようよ。昨日はいっぱい遊んだりして、疲れているだろうし」
「そうだね」
ガタン、ゴトンと音を立てて電車は走る。
私達3人を乗せて。
私達の幸せを乗せて。
私のサンタクロースを乗せて…。
おしまい
質問回答ネタは果たして上手く使えたのでしょうか?
派手なピンクではないけれど大きなハートのペアルック。
仲の良い家族、は1225号室で姉弟水入らず。
アレ。おかげで慎吾君がとてつもない大出費を(笑)
SUMI様