ココロにリボンをかけて
「お前達っ! そこで何をしているんだっ!?」
突然、校庭の方から怒声。
慌てて振り向くとそこには、部活で残っていた体育教師。
「に、逃げろっ!」
とっさに慎吾は叫んだ。
NANANのチョコを荒々しく鞄に詰め込むと、七瀬の手をとった。
「別々に逃げるぞっ! 多分俺達男子を追ってくるからっ!」
「ちょい待ちぃっ! 七瀬君、これっ!」
ライムは鞄から引っ張り出した大きな包みを、七瀬へと乱暴に投げ渡した。
「あ、ありがとうライムちゃん…」
「七瀬行くぞっ! 2人も早く逆方向へ走れっ!」
七瀬の腕を掴んだまま、慎吾は一目散に逃げ出した。
NANAとライムはなごり惜しそうに彼等の背中を見たが、すぐ逆方向へ走り出した。
ここで教師に捕まっては、自分達だけじゃなく…慎吾や七瀬にまで迷惑がかかってしまう。
それだけは、絶対に嫌だから。
「慎吾君…どうか無事でっ!」
「せっかくロマンチックに渡そう思てたのに、何でこうなってしまうんよ〜っ!」
こうして苦労したバレンタインは、ドタバタ騒ぎで幕が下りてしまうのだった。
男子側の幕はまだ下りていなかった。
慎吾の予想通り、体育教師は男子側を追ってきたのだ。
その必死さは、まるで自分がチョコをもらえないからという嫉妬にも思える。
「お前達、待たんかっ!」
「待てと言われて待つ馬鹿がいるかってんだっ!」
だが慎吾の言葉に逆らうかのように、七瀬の足取りが遅くなる。
「七瀬、もっと速く走れっ! 停学になってもいいのかっ!?」