真摯な意味


「真摯な意味」




NANAがいなくなって結構な時間が流れた。
自分が医者になろうと決心してからは猛勉強に猛勉強を重ねて鷹宰学園のトップクラスの成績で通っている。
澪ちゃんにも勉強を教えてもらった。
あれから数十ヶ月……。
俺、橘 慎吾もいよいよ来月で卒業を迎えようとしていた。
「早いもんだよなぁ」
自分以外誰もいない寮の自室で呟く。
トップクラスの成績のおかげでNANAと一緒にいたこの部屋は誰にも荒らされていない。
成績が上がったから学園側は『勉強の差し支えになる者はいらない』との事で1人部屋のままだ。
「NANA……。お前なら今の俺はどんな風に写る?」
いるはずの無いNANA向けての言葉。
また静かな音に掻き消される。
「変だよなぁ。『雨でも降るかな?』って笑ってくれるんだよな?」
涙が溢れる。
節目節目はいつもこうだ……
NANAがいたらって考えてしまう。
「馬鹿だよなぁ……。本当に馬鹿だよなぁ」
涙が止まらない。
「未だにもしかしたらって考えて……女々しいよなぁ」
NANAとキスをしたこの部屋。
NANAと一つになったこの部屋。
NANAと喧嘩したこの部屋。
NANAと和解したこの部屋。
「医者になって俺は何をしたいのかな…」
涙は止まらない。
「なぁ、教えてくれよ」
そう言ってNANAが使っていた机に縋り付く。
無理を言ってそのままにして貰っている。
でも、それももう意味が無くなってしまう。
自分が出て行かなければならないから…………。








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