1日目『プロローグ』
1日目『プロローグ』



投稿者:HIDETO

第1話『橘慎吾の憂鬱』



NANAが編入して来た。

それも俺に会いたいがために男装までして。

………

正直、悪い気はしない。
だが、ちょっと…いや、かなり突拍子もない話だ。

NANAは、可愛い。
可愛いんだけど、ちょっと(かなり)変わっている。
と言うか、天然なのか?アレは。


―――などと考えていると、学園についてしまっていた。

教室のドアを開けると、いきなり太陽が話し掛けてきた…



投稿者:克雪

第2話『女子棟への編入生』



「慎吾、知ってるか?」
「何が?」
突然の太陽のドアップに一瞬戸惑いながらも、教室の中へと入っていく。
「あ、待ってよ慎吾くん!」
NANAもまた、俺のすぐ後ろについてくる。
ちょこちょことついてくるその仕草がやっぱり可愛い。
が、そんな俺の気持ちを外に出すわけにもいかず、
太陽にまた話を振ることにした。
「太陽、話って?」
「ああ、今日女子棟に編入生が来るんだってよ。」
「うむ、僕が仕入れた情報によるとだな…。」
太陽に話を振ったはずが、何故か光が横からでしゃばって
無理矢理会話に乱入してくる。
まぁ、俺としては誰が話をしようと問題ないんだけど…。
とりあえず話を聞きながらかばんを机に置き、
そのまま椅子へと腰を下ろす。
NANAも俺にならい、自分の席へと座り、俺たちの方へと向き直る。
「…実はその編入生は、神崎くんの双子の『妹』らしいぞ。」

「え!?わた…ボク、妹なんていないよ?」
そう、俺が知る限りはNANAには妹なんて存在しない。
確か、聞いた話によるとNANAにいるのは双子の『弟』であって、
決して『妹』ではない。
双子の弟、『神崎七瀬』…まさかな。
「その妹なんだが、ショートヘアーで緑色の瞳。
ボーイッシュな、とても可愛らしいお嬢さんだそうだな、神崎くん?」
「え、えっと…あはは…。」
NANAのこの反応…間違いないらしい。
編入生は『神崎 七瀬』…しかも本物…。



投稿者:SUMI

第3話『特別授業での特別な出来事』



化学室へ向かう途中、俺は本日何度目かのため息を吐いた。
NANAだけでも苦労するのに、七瀬まで鷹宰学園に来るとは。
なぜ編入してきたのか解らないが、やっかいな事になるのは間違いないだろう。
しかもNANAと同じく公文書偽証をして、神崎七海として編入してきたのだから。
情報が欲しいけど、さすがに女子棟の事だからなぁ…。
「おい、どこまで行く気だ」
光に話しかけられ、自分が化学室のドアを通り過ぎていた事に気付く。
「ああ、悪ぃ。ちょっと考え事してて…」
「ま、何を考えていたかは想像がつくがな」
光が化学室のドアを開け、俺達は中に入った。
すると、化学室の一角に人だかりが出来ている。
それを呆れた表情で見つめている、1人の美少女。
「澪ちゃん」
俺の呼びかけに気付き、澪ちゃんがこっちを振り返る。
「…こんにちわ」
少しだけ笑って挨拶をしてくる澪ちゃんを、俺は可愛いと思った。
もっとも、そんな事をNANAに言ったら大変な事になるが。
「あのさ、あの人だかり…何?」
「編入生よ」
編入生…。
それは、つまり。
「難関で知られる鷹宰学園の編入試験を、ほぼ満点の成績で合格した編入生。
どこかで聞いた話ね」
「…は、は。ホント、どっかで聞いた話だな…」
と、その時。
人だかりの中から、可愛らしい美少女が出てきた。
その美少女の顔は、驚くほどNANAに似ている。
光なんか、目を見開いて凝視している。
その美少女は俺達の方へ向かってきて、戸惑いながら口を開く。
「須藤さん、そちらの人は?」
…アレ? 何で澪ちゃんに話しかけてんだ?
「彼は…その、友達よ。ただの友達」
友達。
澪ちゃんの口から聞くと、ずいぶんと新鮮な響きが…って、そうじゃなくて!
「はじめまして。橘慎吾です」
「ボクは伊集院ひか…」
「橘慎吾!」
光は自分の自己紹介を無視され、少々苛立っているようだ。
「あの、それじゃあ君が姉さ――」
「な、NANAから話は聞いてるよ! 双子の姉の神崎七海だろ?」
七瀬が『姉さん』と口走りそうになり、俺はとっさにフォローする。
七瀬も気付いたらしく、ちょっと困った顔をしている。
その上目遣いに俺を見つめる七瀬が、男だって事を忘れそうなほど可愛い…。
って、何を考えてるんだ俺は!
「…どうかしたの?」
俺の行動を怪しく思ったのか、澪ちゃんがいぶかしげに訊ねてきた。
「い、いや。あんましNANAにそっくりだったんで、驚いちまって…」
澪ちゃんに話しかけられて、ふと思い出す。
さっき、なぜ七瀬は澪ちゃんに話しかけたのだろう?
「えっと、七…海と澪ちゃんって…」
「ルームメイトよ」
……。
えーと。
「私、今まで1人部屋だったから」
無表情のまま衝撃の事実を告げる澪ちゃん。
ちょっと驚いた顔をしている光。
そして、恥ずかしそうに俺を見つめる七瀬。
…俺は今、どんな顔をしてるんだろう?



投稿者:LQ

第4話『るーむめいと』



――ここが、姉さんが通っている学校。
そう思うと、どうしても緊張してしまう。
僕は女子として、姉さんは男子として通っているから、僕は滅多に会うことは出来ない。
でも…女子寮に住むなんて大丈夫なのだろうか。
部屋は2人一組だと言うから、出来れば一人部屋が良いんだけどな…。
「神崎七海だな?」
門の前で、僕は男の人に呼ばれた。
いや、変な仮面をかぶっていて声以外では男か女かわからなかったけど。
「私は女子寮を管理しているありむ…おっと、名前はなんだって良いな。」
「はぁ…。」
「君が入る部屋は、今まで余って1人だった奴の部屋だ。」
うっ…。
相部屋なのか…。
「名前は『須藤澪』という。『みお』じゃないぞ。『れい』だぞ。」
別に話してるんだからそのくらいわかると思うけど…。
「その人はどこにいるんですか?」
「ああ、部屋にいる。仲良くやれよ。」
変な人だな…と思いつつ、言われた部屋のドアの前へと着いた。
…同じ部屋の人とは仲良く出来るだろうか?
その前に、男であることはばれないだろうか?
姉さんは橘慎吾さんといっしょの部屋らしいからフォローしてもらえるだろうけど…。
そんなことを考えながらドアをあける。
「きゃっ!?」
中には女の人がいた。多分ルームメイトとなる須藤澪さんだろう。
しかし…。
「き、着替え中だったんですね!?ご、ご、ごめんなさい!!」
慌ててドアを閉める。お約束ながらやってしまった。
それにしてもきれいな人だな…。
…じゃなくて。
「…終わったわよ。」
そう言われて、おそるおそるドアをあける。
「本当にごめんなさい…。」
「気にしないで。」
気にしないでといわれても…きれいだったし…。
…じゃないってば。
「…あなたが今日からこの部屋に来る神崎七海さんね。私は須藤澪。よろしく。」
須藤さんは淡々と語ると、部屋を出ようとする。
「私はちょっと用があるから、その間にさっさと荷物を運び込んでおいてちょうだい。」
「あ…。」
行ってしまった。
「この先不安だな…。」
僕がそうつぶやいたとき、
「もう不安なのか?」
また管理人さんだ。
「荷物、ここまで持ってきたぞ。あとは一人で出来るか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」
「そうか。何かあったらすぐ相談にきなさい。では。」
そう言うと管理人さんは去っていった。やっぱり変な人だ。
そして僕は荷物を運び込んだ――
僕はこんな昨日の出来事をかいつまんで慎吾さんたちに話した。
慎吾さんと隣の人から帰ってきた言葉は、
「女子寮の管理人も変なのか…。」
だけだったけど、僕が男だって知ってる慎吾さんは須藤さんの着替えシーンに直面したことについてどう思っているのだろう。
――そして先生が教室に入ってきた。



投稿者:SUMI

第5話『もう一度、自由実験』



「橘、君は誰と組むのだ?」
不意にかけられた光の声に、俺は我に返った。
「組む? 組むって、なんだよ?」
今の今までノートに書き込みをする振りをしながら考え事をしていたので、
いきなり組むと言われても何の事だか解らない。
考え事とは、当然七瀬の事だ。
…ん?
これと同じ様な事が前にもあったよ〜な…。
「まったく。聞いてなかったのか?」
光は呆れ果てた顔で言った。
「次の授業から、またやるそうだ」
「何を?」
「自由実験だ」
自由実験…って、ついこの間やったばかりだろ?
…まさか授業が面倒くさいから自由実験をさせてるんじゃないだろうな?
ったく、何を考えてるんだか。
男女奇数だから、また男女ペアが出来るよな。
待てよ? 七瀬が編入してきたから女子は偶数か。
「今度は2人1組ではなく、好きな者同士4人まで組んでよいそうだ」
「4人?」
女子は7人…七瀬を入れて8人だから、ちょうど2組出来るな。
男女ペアは無理か。
男子は23人だから、どっか3人組みになるな。
あんまり人数多いのも面倒だし、俺と光と、あと1人適当に――。
「男女合同も可、だぞ」
「…は?」
「前回の君達の発表が1番出来が良かったからな。
 須藤女史のおかげだと言ってしまえばそれまでだが、
 君のレポートもずいぶん評価されたそうじゃないか」
「…ああ」
「それで男女合同というのも面白いのでは…となったのだ。
 おや? 早速お誘いが来たようだな」
光の視線が俺の背後に移り、俺も振り返ってみた。
そこに立っていたのは澪ちゃんと…七瀬。
「あなた達、まだ誰とも組んでないわよね。よかったら私達と組まない?」
私達って事は、当然七瀬も一緒だよな。
「ああ、いいぜ。またよろしくな、澪ちゃん」
「か、勘違いしないでよね。私はその…神崎さんがあなたと組みたいって言うから…」
「七海が?」
七瀬はこっくりとうなずく。
とその時、光が口を開く。
「橘。いくらルームメイトの姉とはいえ、呼び捨てにするのはどうかと思うぞ?
 教師が変な誤解をして、男女交際の疑いをかけてくるかもしれないからな」
「そ、そうだな」
しまった。七瀬が男だって知ってるから、つい…。
ふと澪ちゃんを見ると、じっと俺を見つめ…というより、睨み付けている様な…。
七瀬は七瀬で苦笑しているが、可愛らしい顔立ちのせいで照れている様にも見える。
ただでさえNANAとホモ疑惑かけられてんのに、これ以上変な誤解は増えないでくれ…。
「さて、どうやらボク達の組は決まったようだな。これからよろしく頼む」
それから光と澪ちゃんが何を実験するか話し合い始めたが、俺は何でもいいので会話に参加しない。
その隙に七瀬と話をしようかと思ったのだが、七瀬も実験内容について話し合っている。
NANAみたいに勉強好きなのか、それともただ真面目なだけなのか。
授業終了まで話し合いは続き、早く教室に戻らないと次の授業に遅刻してしまうため、
結局それ以上七瀬と話は出来なかった。
教室へ向かう途中、光が、
「神崎君への土産話が出来たな」
と言った。
七瀬の事について、NANAとも色々話し合わなきゃなぁ…。
とりあえず教室じゃ話しにくいから、寮に帰ってからじっくり話し合おうと心に決めた。




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