4日目
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投稿者:克雪

第1話『鷹宰祭』



「ふえっくしょい!!」
「きゃんっ!!」
俺の豪快なくしゃみに恐れをなしたのか、NANAが可愛らしい悲鳴をあげる。
昨日、ずっと七瀬を待っていたせいか、風邪をひいてしまったらしい。
39℃の高熱にもかかわらず登校し、こうして放課後のHRを迎えたのにはわけがある。
一つ目は、七瀬になんとしてでも会うこと。
もう一つは、邪魔な光に風邪を移し、学校を休ませること。
そのために、俺は休み時間の度に光の前でセキをし、鼻をかみ、
挙句の果てには光の昼食にむかってくしゃみを飛ばしたりまでした。
さすがに殴らんばかりの勢いで怒っていたが…。
「はいそこ、ボ〜ッとしない。」
弥生先生が、俺を指差してくる。
まったく…学校の先生ともあろう人が人を指差すだなんて、
この学園の秩序はどうなってるんだか…。
「え〜、みんなも知っているとは思うけど、今日からちょうど一週間後の
木、金曜日は鷹宰祭ですね?
そこで、全校生徒──というよりクラス対抗っていう形になるんだけど、
ミス・ミスター鷹宰というものが催されます。
クラス代表の男の子が女装、女の子が男装して、誰が一番似合うかを決めるのね。」
そこまで先生が言ったところで、ブーイングの嵐が巻き起こる。
女の子の男装は見てみたいが、はっきり言って女装など見たくもない、ということだろう。
「先生、伊集院くんがいいとおもいま〜す。」
「俺もさんせ〜い!!」
「そうそう、ナルシストな伊集院が出るべきだとおもいま〜す。」
「なっ!?き、キミ達、なんということをっ!」
何か、面白い展開になってきたな…。
「ここは一つ、友の女装を快く応援してやろうではないか。なぁ、太陽、NANA?」
「おうっ!俺が化粧してやるよ。ねぇちゃんが3人もいるからな、そういうのには詳しいんだ。」
「え?う、うん…ふぁいと、伊集院くん!」
「クッ…人事だと思って──そうだ!先生!!ぼくは、神崎くんが女装するのがいいと
思います!彼には、双子のお姉さんがいるので、丁度いいと思いますが、どうでしょう?」
げえっ!?な、何を言い出しやがるんだこのおバカは!
「そうね…いいかもしれないわね、それ。」
「そうでしょうとも!『七海ちゃん』が『七瀬くん』に、『七瀬くん』が『七海ちゃん』に。
これは面白いと思うのだが、諸君はどうだろうか!?」
いや、それは『現状』だから…と言っても聞かないんだろうなぁ。
そんな俺の心中を無視し、クラス中から、歓喜の声が巻き上がる。
女装七瀬はすでに男連中から『可愛い』と評判だからな…それが男装するとなると、
これくらい盛り上がって当然なんだろうな…。


「はぁ…どうしよう。」
HRで、『ミス・ミスター鷹宰』で男装する役に選ばれてしまった。
男装が似合いすぎて、男の子だってばれちゃうんじゃないだろうか?
…でも、これはある意味チャンスだと思う。
男装してれば、姉さんと入れ替わることも可能かもしれないし、
うまくすれば橘さんに会って、話が出来るかもしれない。
たとえ男色家だとしても!
そんなことを思いながら靴箱を開けると、そこには一通の手紙が入っていた。
そして、そこにはこんな言葉が書いてあった。

『昨日は来てくれなくて残念だったわ…しばらくは忙しそうだから、
鷹宰祭当日に中庭で待ってます。』




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