サンタの秘密はユメのナカ?






 街路樹に巻き付けられたたくさんの電球が明かりを灯し、街を着飾らせる。
 そして幾千の星々と月が、漆黒の空を輝かせる。
 2つの光に照らされた道を、クリスマスを楽しみながら人々が歩いていく。
 友達同士が。
 家族連れが。
 恋人同士が。
 俺達が。
「街がとっても綺麗…」
「そうだな。イルミレーションなんてこの時期しか見られないし、よーく見ておけよ」
「うん」
 NANAは煌めく街を見回しながら、俺と一緒に歩いていた。
 行き先は、駅近くの自然公園。
 出来るだけお金のかからない場所を選んだ結果だ。
 目的地に着くまでの間も、NANAにとっては夢のようなひとときなのだろうか?
 さっきから笑顔を絶やさず、俺と組んだ腕に力を込めている。
 しばらくして公園にたどり着き、噴水のある中央広場へ向かった。
 噴水の中にはライトが設置してあり、噴き上がる水をライトアップしている。
 すでにいくつものカップルがベンチや噴水の近くで、愛を囁き合っていた。
 空いているベンチを見つけ、NANAを連れてそこへ座る。
「さて、しばらくここでのんびりしようぜ」
「うん!」
 さて。とりあえずここに来たものの、これからどうしようかな?
 このまま噴水を眺めている訳にもいかないし。
 何か話のネタはないかな…。
「そういえば、ライムちゃんに渡された包みの中はいったい何だったんだい?」
 あまり歓迎したくない話のネタを振られ、俺は手に持っていた包みに視線を下ろした。
「…まだ、開けてないんだ」
「じゃあさっそく開けてみようよ!」
 俺は恐る恐る包みのリボンを解き、中を覗き込んだ。
 何やら白い物が入っている。
 首をかしげながら、包みの中に手を突っ込んだ。
 ふわふわして、あたたかい。
 ライムからのプレゼントの正体、それは雪のように白いセーターだった。
「わ〜、セーターだ。慎吾君、よかったね!」
「あ、ああ…」
 普通すぎる。
 俺はクリスマスプレゼントという言葉の裏に隠された意味を考えながら、セーターを凝視した。
 そういえば中の物を見れば、どんな命令なのかは解る…って言ってたけど、これを着ろって事か?
 膝の上に乗せっぱなしの包みに、まだ何か入っている感触。
 もう一度包みの中に手を入れ、中身を取り出す。
 今度こそ、包みは空になった。
 そして新たに出てきたそれは、同じく白のセーター。
「2着入ってたのか。けど、結局どんな命令なのかは解んねーな…これを着ればいいのか?」
 眉を寄せながら、俺はたたまれたセーターを広げてみた。
 シンプルな白のセーターは毛糸で編まれていて、触ると柔らかな感触が肌を包む。
 ハイネックになっているから、首もあたたかいだろう。





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