サンタの秘密はユメのナカ?
そして胸元に大きなピンクのハート。
ハートの中には白地で『NANA』と編み込まれていた。
どうして俺へのプレゼントに、NANAの名前が?
NANAも隣で首をかしげている。
とりあえず『NANA』と書かれたセーターをその名前の主に渡し、もう片方のセーターを広げる。
やはり同じデザインで、胸元にピンクのハート。
そこにあるのは『SHINGO』の文字。
――とにかく、その中のもんを後で確認しぃ! そうすればどんな命令かは解る。
ライムの命令。
それはこのセーターを、俺とNANAとで着ろ、という事だろう。
この大きなハート模様のある、恥ずかしいペアルックのセーターを。
どうやらNANAも察したらしい。
自分の名前のセーターを胸に抱きながら、頬を染め、上目遣いで俺を見つめていた。
普段なら、こんな物を着る訳がない。絶対に断る。
けど、NANAの期待と…今日がクリスマスという事と…ライムの命令と脅迫。
再び、ハートマークを凝視する。
くっ…こんな恥ずかしいセーターを着て人前に出るなんて、俺は絶対に嫌だぞっ!
何とかNANAを説得して、俺がちゃんとこのセーターを着たという事にしてもらい、
それでライムに許してもらう…恐らく、これが最前の手だ。
さっそくNANAを説得するため視線を向けると、自分の分のセーターを大切そうに抱きしめていた。
「ねえ、慎吾君」
「な、何だ?」