サンタの秘密はユメのナカ?
それは天高くそびえ立っていた。
都内でも有名な超一流ホテル。
一晩泊まるだけで俺の小遣いがふっ飛んでしまう、場違いな所。
ボーイにおじぎをされ、俺とNANAは腕を組みながらホテルに入った。
3階まで突き抜けの高い天井を見上げれば、シャンデリアがキラキラと輝いている。
ピアノの優雅な旋律が、ゆったりとロビーを流れている。
そして床は鏡のように磨かれた大理石。
暖房のおかげでホテルの中は春のように暖かく、NANAは上着を脱いだ。
「慎吾君、脱がないの?」
「いや、俺はいい」
少し暑いから、本当は脱ぎたい。
けれど上着を脱いだ場合、大きなハートマーク付きセーターを見られてしまう。
NANAとライムには悪いが、こんな高級ホテルでそんな姿を晒したくない。
俺は服の中で軽い汗をかきながら、フロントへ向かった。
フロント係が笑顔で頭を下げる。
内心、俺みたいな奴がどうしてこのホテルにいるのか疑問に思っているかもしれない。
「すいません。予約していた橘慎吾ですけど…」
「橘慎吾様ですね? 少々お待ちください」
フロント係が確認をしていると、NANAがそっと耳打ちをしてきた。
「ねえ…こんな高そうなホテルに泊まって大丈夫なの?」
「大丈夫」
NANAは俺の財布を心配してくれてるんだろうな。
ボーリングの時、負けて昼食をおごる事になったら財布がやばいとぼやいていたのを覚えているのだろう。
結局おごらずにはすんだものの、ボーリングをする前から財布の中はすでにやばい状況だった。
まあ財布に余裕がある状態だったとしても、本来ならこんなホテルに泊まる事は不可能なんだけどな。
俺の素っ気ない返事を聞いて、NANAは不安そうに眉を寄せた。
そして再びNANAが何か言おうとしたその時。
「お待たせいたしました。お部屋は最上階の1224号室となっております」
と言って、フロント係がカードキーを差し出した。
「どうも」
俺はキーを受け取り、NANAを連れてエレベーターへ向かう。
その間ずっと、NANAはいぶかしげに俺を見つめていた。
疑問はすぐ解けるだろう。