サンタの秘密はユメのナカ?
腕時計のアラームを止め、時刻を確認する。
午前、つまり夜中の2時。
大きなあくびをして、俺はゆっくりと起き上がった。
瞼をこすりながら隣のベッドを見ると、そこに姉貴の姿は無かった。
当然だ。ここは俺と姉貴が使っていた部屋じゃなく、七瀬が招待してくれたホテルなのだから。
ついさっきまで見ていた夢が、ぼんやりと脳裏に思い浮かぶ。
サンタクロースがいないと解った、クリスマスの夜の出来事を。
あの時、部屋のドアが開いて…人が入ってきて、姉貴の枕元にプレゼントを置いて…。
次に俺のベッドにやって来て、プレゼントを枕元に置いたところで、俺は布団を跳ねのけ起き上がった。
そこにいたのはサンタクロースじゃなく、俺の親父だった。
あの時は夜だってのに大泣きしちまって、大変だったな…。
姉貴の言葉が真実だと知り、子供の夢を1つ失った日。
誰もが一度は経験する事だ。
でも…NANAはまだ、経験していない。
俺はまず部屋の電気を点け、洗面所へ行き、顔を洗って頭をはっきりさせる。
そしてソファーの上に置かれた俺の鞄を開き、中から2つの包みを取り出す。
綺麗な包装紙とリボンに包まれた、NANAと七瀬へのクリスマスプレゼント。
片方は小さくて軽いが、もう片方は大きくて重い。
プレゼントの金額に差があるが、こちらにも事情があるのだから勘弁して欲しい。
それに安い方だって、1万円以上もしたんだからな。
さてと、それじゃあさっそく計画を実行させてもらうか。
隣の1225号室。NANAと、七瀬の部屋の前。
俺はポケットに手を入れ、そこから一枚のカードキーを取り出した。
むろんこれは、1224号室の鍵ではない。
NANAと七瀬を1225号室に押し込めた時、七瀬から拝借した物だ。
俺はカードキーを差し込み、音を立てないよう気を配りながらドアを開く。