サンタの秘密はユメのナカ?




 部屋は黄色い薄明かりに照らされ、ベッドやソファーの位置はしっかり解る。
 ベッド脇の電気スタンドを使っているのか、それとも天井の電気を豆電球にしているのか。
 どちらにしても、こちらとしては好都合だ。
 息をひそめ、抜き足差し足で侵入。
 どうやら薄明かりの正体は、天井の豆電球だったようだ。
 2つのベッドはどちらもふくらんで、小さく上下している。
 それに合わせ、かすかな寝息が聞こえた。
 よしよし、ぐっすり眠ってるな。
 とりあえず入口側のベッドに忍び寄り、眠っている人物を確認する。
 対面のベッドに背を向ける形で眠っており、俺も奥のベッド側に回り込んでいるため顔は見えない。
 寒いのか首元まで布団にもぐり込んでいるため、髪の長さが解らない。
 2人は男女の双子だというのに外見がそっくりなため、見分けは髪を見ないと難しい。
 普段なら仕草や微妙な雰囲気の違いから見分けは付くのだが、この薄明かりの中では解らない。
 さて、どうしたものか…。
 起こさないよう注意しながら、俺はそっと布団に手を伸ばした。
 髪が長いか短いか、それさえ確認出来れば…。
 指先が布団に触れた瞬間、中の人物が寝返りを打った。
 慌てて指を離し、俺は思わず後ずさりをした。
 勢い良く引いた手が、ベッド脇の電気スタンドに当たりガタリと音を立てる。
 またしても俺の心臓が悲鳴を上げた。
 頼む、目を覚まさないでくれっ!
 心の中で痛烈に叫ぶ。
 その願いが通じたのか、ベッドの中の人物は物音に気付いた様子がない。
 俺はホッと胸を撫で下ろした。
 そして幸いにも、今の寝返りで顔がこちらを向いた。
 そっと覗き込むと、そこにはあどけない安らかな寝顔。
 見分けが付かないほどそっくりな双子。
 けれど俺は、今目の前で眠っているのが七瀬だと解った。
 明確な違いを上げる事は出来ない。
 でもなんとなく解った。
 俺は左脇に抱えた2つのプレゼント、その一方を七瀬の枕元に置いた。
 小さな長方形の包みを。
「メリークリスマス、七瀬」
 そっと耳元で囁くと、七瀬は小さな笑みを浮かべた。

 多分俺と違って幸せな夢を見ているんだろう。

 さて、次はNANAの番だ。
 俺はゆっくりと反対側のベッドに歩み寄り、NANAの寝顔を覗き込む。
(やっぱり姉弟だな。寝顔がそっくりだ)
 ふいに愛しさが込み上げ、ついNANAのほっぺを軽くつつく。
 プニプニと柔らかな頬が、弾力を持って指を押し返す。
 NANAは気付かず、スヤスヤと寝息を立てている。
 自分でも不思議なくらい優しい気持ちになって、俺はNANAに微笑みかけた。
「NANA…メリークリスマス」
 サンタクロースからのプレゼントを、そっとNANAの枕元へ置いた。
 そしてさっきつついた柔らかな頬に、自身の唇を近づける。

 ――チュッ。

 小さな音の後、俺は静かに部屋を出た。





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