サンタの秘密はユメのナカ?






 ――ガタン、ゴトン。
 心地よい揺れに身をゆだねながら、俺は窓の外をぼんやりと見つめていた。
 銀化粧をすませた町並みが、ゆっくりと後ろへ流れて行く。
「綺麗だね」
 同様に隣で外の風景を見ていたNANAが、膝の上に置かれた箱を撫でながら言った。
 対面の席に座る七瀬も、やっぱり外を見ている。
 俺達は今、神崎家の別宅へ向かう電車に揺られている。
 昨晩の雪はすでに止んでいたが、街一面を白く染め上げていた。
 2人はその景色を楽しみたいがために、電車に乗るとすぐ窓際の席を占領してしまった。
 朝。NANAと七瀬はその光景に感動し、目を覚ましてから一時間くらい窓の前に立ち尽くしていたらしい。
 そして…。
「姉さん。嬉しいのは解るけれど、それ…鞄に閉まった方がいいんじゃない?」
 七瀬はNANAの膝を指差して言った。
「NANA。もし床に落としたりして、壊れちまったらどうするんだ?」
「だってぇ…すっごく楽しみなんだもん。早く家に帰って接続したいなぁ」
 と、NANAは愛しそうに箱を撫でた。
「えへへ…パソコンに触るなんて、本当に久し振り」
 その中身は、最新のノートパソコン。
 以前俺とメールを交わしていた時に使っていたNANAのノートパソコンは壊れてしまったので、
 新しいノートパソコンが欲しいと、冬休み前夜に言っていた。
 おかげで貯金がパァになっちまったけど…。
 朝、しばらく雪景色を見ていたせいで気付くのが遅れたが、
 2人は枕元のプレゼントを発見してすごく喜んでいたみたいだ。
 おかげで俺はまだ眠っているというのに、部屋のドアを思い切り叩いて俺を無理矢理起こし、
 プレゼントを見せびらかしてきた。
 サンタクロースからのプレゼントだと、瞳を輝かせて。
 まあ七瀬はサンタクロースの正体が解ってたらしく、後でこっそりお礼を言いにきたけど。
 多分、神崎家別宅に着いて最初にする事は、ノートパソコンの接続だろうな。
「ねえねえ。このノートパソコンを使えば、冬休み中でも慎吾君とメールが出来るねっ!」
「悪ぃ。一応俺もノートパソコン持ってきてるけど、実家はネットに接続出来ないんだよ」
「ええーっ!?」
 さっきまでの笑顔はどこへいったのか、NANAは泣きそうな顔で俺にすり寄ってくる。
「…ボク、また君とメールが出来るって楽しみにしてたのに…。ねえ、実家でもネットに接続出来るようにしてよ」
「無理、んな金無い」
「そんなぁ…」
 ガックリとうなだれるNANAの頭に、俺はポンと手を乗せる。
「NAーNA。冬休みが終われば、またずっと一緒だろ?
 それに2〜3日は俺も七瀬と一緒に泊まるつもりだし、我慢しろよ」
「…うん」
「とりあえずそのノートパソコン、バッグに閉まっておけよ」
「は〜い…」
 NANAは俺に言われるがまま、ノートパソコンの入った箱を残念そうに自分の鞄へ詰め込む。
 そんなNANAがちょっとかわいそうで、
「家に着くまでの我慢。昨日の夜みたいに、また3人で馬鹿騒ぎでもしようぜ。それに、今度は温子さんも一緒だ。
 まだクリスマスは終わってないんだし、楽しみはまだたくさん残ってるだろ?」
「うん…そうだね、まだクリスマスは終わってないんだもの。帰ったらいっぱい遊ぼうねっ!」
「ああ」
 優しく微笑みかけると、NANAは元気いっぱいの笑顔を返してくれた。
 対面の席で七瀬も幸せを噛み締めるかのように、おだやかな瞳で俺達を見つめていた。
 クリスマスはまだ終わらない。
 電車は俺達3人を乗せて、窓に銀色の世界を映しながら走り続ける。
 心地よい揺れとともに。































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