サンタの秘密はユメのナカ?
瞳を輝かせながら、向かい側に座る七瀬はピカピカの腕時計を見つめていた。
「七瀬、よっぽどその腕時計が気に入ったみたいね」
「うん。サンタさんからの、大切なプレゼントだからね」
七瀬は左腕を上げ、手首に巻かれた腕時計を見せてきた。
真っ白な文字盤に、金の数字と金の針。
銀色の短針がカチコチと音を立てながら時を刻む。
「アハッ。七瀬ったら子供みたい」
「姉さんこそプレゼントのノートパソコンを使えるのを、子供みたいに楽しみにしてるくせに」
「えへへ〜。そりゃあ、生まれて初めてもらったサンタさんからのプレゼントだものっ!」
一瞬、七瀬は申し訳無さそうに眉を寄せてしまった。
けれどすぐ、おだやかな微笑みとともに視線を下ろした。
その視線の先は、私の膝。
「…ぐっすり眠っているね」
「ええ。最初、私の肩に頭を乗せてきた時は驚いちゃったけど…慎吾君、可愛いな」
私も、自分のお膝の上へと視線を下ろす。
そこには大好きな慎吾君の、安らかな寝顔。
最初、彼の頭は私の肩にあったのだけれど…電車が揺れてバランスを崩し、今は私の膝に移動している。
私も昔、温子伯母さんに膝枕をしてもらった事がある。
とてもあたたかくて柔らかくて、それだけでとっても幸せな気持ちになれる不思議な力を持っている。
だから彼も、私の膝枕で幸せな気持ちになってくれているのかしら?
「ねえ。七瀬も後で膝枕してあげようか?」
「え、ええっ!? ボクはいいよ…その、恥ずかしいし…」
「そう? 残念だなぁ、七瀬にもして上げたかったのに」
うふふ。七瀬ったら、顔を真っ赤にしちゃってる。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに、姉弟なのだから。
「あ、あの…」
「なぁに? やっぱり膝枕して欲しくなっちゃった?」
「そ、そうじゃなくて。えと、ボク…ちょっとトイレ行ってくるよ」
七瀬は頬を染めたまま立ち上がる。
「行ってらっしゃい」
七瀬を見送ってから、私は再び視線を落とした。
うふふ…可愛い寝顔。ちょっぴりいたずらしちゃおうかしら?
私は軽く彼の頬をつついてみる。
「うう…ん……」
あ、反応があった。けれど目を覚ます気配は見せない。
「しーんーごー君」
「ん…むう…」
そっと彼の瞳にかかる前髪を払い、そのまま髪を撫でる。
彼は気持ち良さそうに微笑んだ。
「…ねえ、慎吾君。私ね…昨日、とっても素敵な夢を見たの」