ブロンド台風注意報!
コンコン、と窓をノックする。
もちろん、男子寮のNANAと橘 慎吾の部屋の窓や。
2階にあるため、近くにあった木の枝をつたって辿り着いたものの、
慎重にいかんと退学ものやな…よし!
うちはしゃがみこんで、奴が窓を開けるのを待つことにした。
部屋に入る前に大声出されて、他の奴らに見つかるわけにはいかんからな。
『ん…誰だ?忙しいってのに。』
窓越しに、奴の声が聞こえてきた。
どうやらまだ起きとったようやな。
忙しいっていうんはもしかして、まだヤッとった途中ってことかい!?
チラッと上を見ると、奴がカーテンを引いて窓を開けようとしとる瞬間やった。
さすがに、うちがおることには気づいてないらしい。
ゆっくりと、ガラガラッ、と窓が開かれる。
さぁ、うちの出番やな。
立ち上がり、奴の眼前に自分の顔を近づける。
「めり〜……くるしみま〜す!。」
「ひいっ!?ら、ライム!?お前なんでこんなとこに!?」
「聴いとったで…あんたとNANAが何をしとったかをな!!」
「ゲエッ!!ま、マジでか!?」
一歩後退した橘 慎吾。
後ろに下がり、全体の姿を見るまでは気付かんかったけど、何?こいつの格好…。
サンタ?
しかもご丁寧に付け髭まで!?
「なぁ、その格好…?」
「ん?ああ…NANAにその…プレゼントをやろうと思ってな。
この格好のほうが、雰囲気でるだろ?
ついさっき寝たところでさ、もし見つかったときも、この格好なら
本物のサンタだと思うだろうしさ。
NANAってさ、まだサンタ信じてるんだぜ?可愛いもんだろ。」
付け髭を指先でいじりながら、NANAの方を見る。
その腕にはうちがプレゼントした巨大熊さん。
ああ、そこまで大事にしてくれとるんかぁ…。
でもって、こいつからもNANAにプレゼント…
そういえばさっき、忙しいって。
はっ!ま、まさか!?
「あんた、その格好でNANAにあんなことやこんなことを!?
『プレゼントだぜ、受け取れよ!』とか言って
あんたの汚いピーーーーをNANAの可愛らしい小さなお尻にっ!!」
「うわぁぁぁぁーーーーー!!大声で何口走ってんだお前!!
言っただろ、ついさっき寝たばっかりだって!
寝たからプレゼントを枕元に置くんだよ!」
『おい慎吾、何かあったのか!?』
『橘、何があったのか知らないが少しは静かに騒げんのか?』
ドンドン、とドアをノックする音と共に、スポーツ特待生&ボンボンの声。
やかましいのは、あんたらの方やろと、突っ込みたい気分や。
「何でもねぇ、じゃじゃ馬が一頭紛れ込んできただけだ、気にすんな。」
『はぁ〜?じゃじゃ馬?…まぁ何でもいいや、早く寝ろよ〜。』
「おう、すまねぇな。」
あんまり心配することもなく去っていく二人。
男の友情なんて、ちっぽけなもんやねんなぁ。
「ん…慎吾くん…。」
なんとか二人組みを追い返した直後、
NANAの可愛らしい寝息というか、寝言が聞こえてきた。
っと、あかん、ずっとここにおったらNANAをおかし──もとい、起こしてまう。
「なぁ、外で話さんか?あんた、ちょっと顔貸し。」
「は?何言ってんだよ、このままダークルートに突入して、
お前を俺の可愛い奴隷にすることだってできるんだぜ?(ニヤリ)」
「そんなことしてみい、ここから下まで放り投げたるからな。(ニタリ)」
「ぬぅ…わかった、今から下りていくから外で待ってろ。」
「あほか、下から出れるわけないやろ、ここから下りるんや。」
「靴は…あ、確か体育で使ったグランドシューズがあったか。」
いそいそと、棚からグランドシューズを取り出す。
ああ、はよせんとNANAが起きてまう。
「ほら、はよ下りらんかい。」
「まて、お前が先に下りろ。」
「何でよ?」
「俺が先に木に渡ったら、お前、俺を蹴落とすだろうが。」
「いややわ、そんなことして、下手したらうち殺人犯やん。そんなことせえへんよ♪」
チッ、と心の中で舌打ちする。
普段ダラダラした鈍い奴のくせに、こんな時だけ鋭いやっちゃで。
「しゃあないな、先に下りるわ。」
やむを得ず、うちが先に下りることになった。
まぁええわ、正々堂々戦ってこそ、勝ったとき嬉しいもんや。