ブロンド台風注意報!


しばらく無言のまま歩き、近くの小さな公園にたどり着く。
やはり時間が時間なだけに誰もおらんようで、
ただただ静寂のみがこの場を支配しとる。
ってうち、詩人やなぁ。
「そうだ、ライム。NANAに熊のぬいぐるみ、サンキューな。」
相も変わらず、サンタの格好の橘 慎吾が
これまたご丁寧に付け髭をつけたまま、照れくさそうに話しかけてくる。
「え?ああ、そんなん別に改めてお礼言われるほどのことでもないよ。」
特に、あんたからはな。
どうせなら、もう一回NANAに抱きしめてお礼言われたいわ。
「NANAのやつ、すっげぇ喜んでたよ。」
「そ、そんなに喜んどったんか?」
少しばかり、罪悪感がうちの大きな胸をしめつけてくる。
あくまで、大きな胸を。
「『熊さん可愛すぎるよ〜♪ライムちゃんに、何かお礼しなくっちゃ!』
とか言いながら、熊さん抱きしめたまま、部屋中ゴロゴロゴロゴロ転がってさ。
時折止まったかと思ったらほお擦りするわ、高い高い〜って上に投げるわ…。
挙句の果てには、風呂にまで持って行こうとするしさ。
ま、さすがに途中で止めたけど、その後すねちゃってさ。
本当に可愛かったなぁ。」
うわぁ…想像するだけで、めっちゃ可愛いやんか、NANA〜♪
どうせならうちの目の前でそんな可愛い仕草してほしかったなぁ。
「で、話を戻すが…俺に話ってなんだよ。」
「もちろん、NANAとのあんなことやこんなことの話や。」
「ぐっ…そ、それはだな…ん?ちょっと待てよ?」
「何や?」
「お前、『聴いてた』って言ったよな?どこで聴いてたんだ?」
「はっ!そ、それは言えんな〜。」
やばい、やばすぎるでこれは!!
どう考えてもおかしすぎるやろ、外で聴いとったやなんて…。
「外で聴いてたはずないよな?
このクソ寒い中、木の上にずっといるなんて、馬鹿のすることだ。
かといって俺たちの部屋は2階だし、
寮の廊下で聴いてただなんて、それこそ問題外だ。
あと考えられる可能性といえば────お、お前、まさか!?」
「な、何やの?大声ださんといてくれる?」
「あのぬいぐるみか!?アレの中に、盗聴器しかけたのか!?」
「ギクッ!!」
「ギクッてお前、わかりやすいリアクションとってくれるじゃねぇか…。」
あかん、ばれてもうた。
どうせばれるんやったら、盗撮にしといたほうがよかったかな…。
「なぁライム、盗聴はさすがに問題だぞ?
確かに男女交際が禁止されてるから自棄(やけ)になるのもわかるが、
お前がやったことは間違いなく──」
「むっ…うるさいなぁ、何をしようとうちの勝手やろ!?」
「な、なんだと?お前が犯罪行為に手を染めようとしてるから──」
あかん、売り言葉に買い言葉や。
ここはひとつ、決定的な発言が必要になってきたな。
何か、こいつを黙らせるような一言──よしっ、こうなったら!!





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