ブロンド台風注意報!


「うちは…うちは…うちが、うちが『法律』や!!!」
「な、何ィィ!?お前、何言って──」
「うちが、法律や言うたんや!!うちがええって言うたら、それは正しい!!
うちの出身は自由の国アメリカ!!
アメリカでは盗聴・盗撮、何でもござれや!
そんなうちが、盗聴してもええ言うたら、黙って従わんかい!」
「嘘つけ!!それは自由の国とは言わん、ただの無法地帯だ!!」
ごもっともや。
そんな無茶苦茶なとこが自分の祖国やなんて、うちかてお断りや。
こいつ、鷹宰の生徒とは思えらんくらい、
頭悪そうやからだませるかと思ったんやけど…。
「大体、お前が法律って時点で、話が斜め45度くらいずれてるんだよ。
ここは日本で、お前はこの国にいる以上、ここの法律に従わなきゃならないだろうが。
お前が本当はアメリカ人で、アメリカが盗聴・盗撮なんでもござれだとしても、だ。」
な、なんて屁理屈を。
いや、あっちの方が正論なんやけど…。
さすがに、もうこれ以上は言い返せらんな。
うつむき加減のうちを見て、橘 慎吾はクルッときびすをかえす。
「じゃあな、ライム。とりあえず、
熊さんの体内に、お前が埋め込んだ盗聴器は外しておくよ。」
何かグロい言い方がちょっと気になるけど、
これで、NANAの日常を知る手段は失われてしまうんやな。
……あれ?
そういえば何か忘れとるような───
「ちょっと待った〜!!」
「な、なんだよ?」
「うちがあんたを呼んだんは、盗聴について口論するためとちゃうで!
あんたとNANAの、不純『同性』交遊について語り合うためや!!」
うちの怒気のこもった声に、橘 慎吾の顔が一気に青ざめる。
うまいこと言いくるめて逃げるつもりやろうけど、そうは問屋がおろさんで。
「はい、そこに正座する!!」
「…はい。」
しゅんとしながら、橘 慎吾はうちが指差したとこに正座する。
敵ながら、弱いやっちゃ。
「ええか、あんたがNANAを可愛いと思うのはしょうがないことやと思う。
誰から見たって、NANAはめっちゃ可愛い男の子や。
けどな、クリスマスプレゼントを装ってピーーーを食らわすのはちと問題やと思うんよ。」
「おい待て、俺は別にプレゼントを装ってなんか──」
「ええから黙って聞き!!
大体あんた、いつもいつもうちの邪魔して、何が楽しいんよ!?
しかも今回はあんな、不潔なことをNANAにして!
NANAは、正真正銘、本物の女の子であるうちが、
学校を卒業してから結婚して、まっとうな道に───」
「はぁ…サンタは散々苦労するって誰かが言ってたっけか。」
こうして、うちと橘 慎吾の二人っきりのクリスマスは真夜中まで続いた。





 END




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