目指せ、80センチ後半!



『目指せ、80センチ後半!』




「はぁ…橘くん…。」
放課後の教室、机に頬杖をつきながらため息を吐く少女。
彼女の名は樋口 若菜。
緑色の長い髪と、同じく緑色の大きな瞳、
そして男の子に対して臆病という気の弱い性格と、
それでいて橘 慎吾に恋してしまったという部分がチャームポイントな女の子だ。
そんな愛しい彼について色々調査したところ、
こともあろうに、クラスメートであり、
常に寝食を共にしているルームメイトである神崎 七瀬と
いわゆる『おホモ達』であるという事実が発覚してしまったのだ。
もちろん、情報源は若菜の親友であり、
橘 慎吾の幼馴染でもある佐伯 美月であることは言うまでもない。
そんな美月は新聞部に所属しており、
その情報収集能力は凡人の若菜を遥かに上回っているだろう。
つまり、美月が持ってきてくれた『おホモ達疑惑』は、
ほぼ100%合っているとみて間違いない。
「どうしよう…まさか、そんなことになってたなんて…。
でも、相手があの神崎くんだもん、ありえない話じゃないし…。」
そう、外から見れば、ただのおホモ達だ。
しかし、おホモ達の二人──慎吾と七瀬だが、
その実態は至って健全、本当は神崎 七瀬は男装の女の子、神崎 七海なのだ。
そうとは知らず、若菜は先ほどからずっとため息をついている。
神崎 七瀬──七海は、とても可愛らしく、
男の子とは思えないほどに華奢で、綺麗で、
思わず見とれてしまうほどの『美少年』である。
当然だ、可愛い女の子が男装しているのだから。
しかし真実を知らない若菜にしてみれば、
とんでもない強敵が横からひょっこり現れたようなもの。
なんとかして、慎吾を七瀬から引き剥がしたいところなのだ。
「私じゃ、勝てないのかなぁ…私にあって、神崎くんにないもの。
それがわからないと、とても勝ち目がないし…。
美月ちゃんに相談したら、何かわかるかな?」
若菜は、勢いよく席を立ち、まっしぐらに新聞部へと走っていった。




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