「目指せ、80センチ後半!」




「須藤さん、お待たせ──って、ええっ!?」
大慌てで、校舎の陰へと身を隠す。
動物小屋の前には、動物を見に来てくれる少女、
須藤 澪がいた。
長く艶やかな黒髪と、何より豊満なバストに、
若菜は密かに憧れを抱いている。
それなのに驚いたのは、その澪の隣に橘 慎吾がいたからだ。
ついさっきまで新聞部にいたはずなのに、
どこをどう先回りしたのか、ちゃっかり澪の隣に腰を下ろし、
楽しそうに話に花を咲かせている様子だ。
二人の会話に、若菜は聞き耳を立ててみることにした。
『ところで女の子の胸ってさ、どれくらい大きくなるんだろうな?』
『なっ──!?ど、どうしていきなりそんなことを聞くのよ!?
そんなの、ただのセクハラじゃないの!』
『あ、いや…俺の幼馴染、なんだか大きくなってきてさ。
で、どうやったんだろうな~って。』
『し、知らないわよ、そんなの!』
『え~、教えてくれよ~♪』
嫌がる澪に、慎吾はやたら楽しそうに、嬉しそうに、胸について聞き出そうとする。
まるで、部下の女の子にセクハラしている上司のようだ。
もしこの場に七海がいたら、耳を引っ張られていたことだろう。
「────やっぱり、巨乳好きなんだ。」
若菜は、もう一度自分の胸へと目を向ける。
…ちょっと、ボリューム不足かな?
あと5センチ、ううん、あと3センチでもあれば、多少は変わるかな?
そんなことを思いながら、澪へと──もとい、澪の胸へと目を向ける。
「やっぱり大きいなぁ…4センチほどでいいから、わけてくれないかな。」
ボソッと、恐ろしいことを言う。
美月ちゃんほどじゃないにしろ、須藤さんも巨乳だな。
私なんかじゃ、橘くんには見向きもされないのかな?
そんなことを考えると、若菜はつい哀しくなってきてしまった。
『じゃ、俺行くとこあるから。』
『ええ、それじゃあ、またね。
今度セクハラしてきたら、仁科先生にばらしちゃうわよ?』
『ゲッ、それだけは勘弁してくれよ。』
どうやら慎吾は学園を出て、違う場所へ行くようだ。
そんな慎吾の後を、若菜はこっそり尾行し始めた。




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