おめでとう×2





 という若菜の疑問は、次の瞬間砕け散った。

「あけましておっめでとーっ!」
「やれやれ、少し遅れてしまったようだ」
 さらに2人の男性が姿を現した。
 そして美月はまたまた、若菜に
「ゴメン」と囁いた。
「遅いじゃねーか。まあ、俺達も人の事は言えないけど」
 やって来たのは、慎吾の親友…伊集院光と、川崎太陽。
「わ、若菜ちゃん。あけましておめでとう!」
 太陽は大きな、少し強張った声で若菜に挨拶をした。
 若菜は思わず美月の背後に回り、身をすくませる…。
 太陽は笑顔のまま固まり、その瞳に深い悲しみが宿った。
 太陽はスポーツ特待生でありながら、なぜか若菜と同じ園芸部にも所属している。
 その理由を知っているのは、親友の慎吾と光だけ。
「慎吾の奴、なぜか川崎君を誘っちゃって…川崎君は伊集院君を誘って…」
 慎吾が太陽を誘った理由は、太陽の恋を応援するためだ。
 太陽が光を誘った理由は、心細かったからだ。
 そして…。

「遅くなってごめんなさい」

 紫に白の花の描かれた振袖姿の美女、NANA以上に大和撫子という言葉が似合う女性。
 須藤澪がやって来た。
「す、須藤さんっ!?」
「澪ちゃん、どうしてここに?」
「樋口さんが初詣に行くって聞いたから、私もご一緒しようかと思って」
 今度は美月が驚く番だった。
 戸惑いながらも若菜に小声で話しかける。
「ちょ、ちょっと。どういう事っ?」
「あの…この前、偶然町で会って…。それで、その。初詣の話をしたら…」
 なるほど…と美月は納得する。
 どういう経緯で知り合ったのかは解らないが、若菜と澪は意外と仲が良い。
 内気でおとなしくて花や動物が大好きな若菜が、どうして澪と気が合ったのか?
 それは今だ謎のままだ。
 こうして若菜と美月と慎吾の3人で行くはずだった初詣は、慎吾の友人3名と、若菜の友達である澪を含め、
 計7人という大人数になってしまった。
 まあさすがにこれ以上人数が増える事はないだろうが…。

「遅うなって堪忍や。NA〜NAぁ、あけましておめでとさん!」
「あ、ライムちゃん。あけましておめでとう」
「ゲッ! NANA、お前が誘った相手って…ライムだったのか?」

 今度は特別授業でNANAと太陽と同じ英会話を選択している、アメリカ人のライムがやってきた。
「…えーと。神崎君も友達を誘ったみたいで、こんな大人数になっちゃって…。
 これじゃあ若菜と慎吾を上手く取り持つ事が出来なさそうで…とにかく、ゴメン」
 さっきから謝ってばかりの美月だった。
 そして若菜は次々と現れる学友を前に、どう反応していいか解らず固まっている。

 親友の恋を応援しようとしている美月。
 友達の恋する相手がいるのでとりあえず誘ってみた慎吾。
 愛する人との初詣に心弾ませるNANA。
 友達に誘われ密かに想いを寄せる彼女に会いにきた太陽。
 親友が心細いからと声をかけてきたのでとりあえずつい来てやった光。
 ちょっと気になる彼と初詣を過ごしたくて友達に自分も行きたいと申し出た澪。
 あきらめた恋の相手と恋敵だった男の恋の行方を見物に来たライム。
 そして密かに想いを寄せる彼と大好きな親友との初詣を心から楽しみにして、
 そこに別の友達も来る事になったけどそれもいいかなって思っていたら、
 あの人の友達やさらにその友達まで来てしまいちょっと混乱気味になってしまった若菜。

 こうしてそれぞれの思惑が絡み合い、鷹宰学園のメンバー勢ぞろいとなってしまった。









≫NEXT→