おめでとう×2
「美月ちゃんっ!」
「若菜っ! ちょ、ちょっと通してくださ…通してっ」
必死に手を伸ばす。
けれど届かない。
親友は、人の海へ消えた。
みんなとはぐれてしまった。
どうすればいいのか解らない、不安だけが膨れ上がっていく。
周りは人でいっぱいだといのに、心細さが胸を締め付ける。
伸ばした手を掴む者はいない。
けれど、伸ばしていない反対側の手を掴む誰か。
「キャッ」
思わず悲鳴を上げる。
掴んだ誰かに身体を引き寄せられ、誰かの腕に包み込まれる。
恐くて声も出ない。
訳も解らぬまま、突然男の人に抱き寄せられたのだから。
助けを呼ぶ、心の中で。
親友が助けに来てくれる事を願う。
あの人が助けに来てくれる事を願う。