おめでとう×2
「若菜ちゃん、大丈夫?」
頭のすぐ上から、恐怖を追い払う優しい声。
見上げてみれば、自分を抱き寄せた誰かは、親友の幼馴染みであり、密かに想いを寄せるあの人。
「た…橘君っ!?]
「まいったな、NANAや他のみんなともはぐれちまった」
慎吾は周囲を見回し、若菜を抱き寄せる腕に力を込めた。
――神様がもう願いを叶えてくれた。
若菜の心臓は、まるで小動物のように鼓動を早める。
いつか抱いた猫ちゃんよりも鼓動は早い。
息がつまり、このままでは窒息してしまいそう。
真冬だというのに、夏のように身体が熱い。
いや、春のようなあたたかさが若菜を包んでいる――。
「若菜ちゃん、とりあえずこの人込みから出よう。これじゃあみんなを探すなんて…若菜ちゃん、聞いてる?」
「は、はいっ…」
「よし。それじゃあはぐれないよう、しっかり俺の手を握っててくれ」
「はいっ」