おめでとう×2
のん気にこんな事していていいのかな? などと考えながら、慎吾は筒を振った。
底に開いた小さい穴から、一本の紙切れ。
紙切れを開くと、そこには『大凶』の文字。
女難の相が出ており、気の強い女性に振り回される1年を送るらしいい。
そんな自分を簡単に想像出来てしまう事が悲しい。
ガックリとその場にうずくまる慎吾を、不安そうに覗き込む若菜。
「あの…大丈夫ですか?」
「大丈夫…心配しなくてもいいよ。神様も参拝客全員の願い事を叶える気はないみたいだな。
願い事を叶えてもらえる人が羨ましいぜ」
今まさに神様に願い事を叶えてもらえた幸運な少女は、慎吾を哀れに思い自分が引いたおみくじを差し出した。
「あの…よかったら私のおみくじと交換しますか?」
「いや、交換しても意味無いと思うんだけど…。それに若菜ちゃんはせっかく大吉が出たんだから、大切にしなよ」
若菜が引いたおみくじは大吉。
『友人関係に恵まれ、とても素敵な贈り物をもらえるだろう』
もしもこれが本当だったら…。
新年早々、1年分の幸運を使い切ってしまいそうだ。
「さてと、気を取り直して美月達を探そうか」
「あ、はい」
数分後、若菜達は出店であったか〜いお茶を飲みながらアンミツを食べていた。
「あぁ〜、美味いっ! 生き返るなぁ」
「あ、あの……」
「ほら、若菜ちゃんも遠慮なんかしないで食べなよ。俺のおごりなんだからさ」
「は、はい。でも、その…私達、こんな所でアンミツを食べていていいんでしょうか?」
「いーのいーの。美月の奴、ここに来る前アンミツ食いたいって言ってたから…ここで待ってりゃ多分来るだろ」
「あ、そうなんですか…」
「そうなの。決してこの人込みの中を歩き回るのがめんどうな訳じゃないぞ」
と口では言っているものの、そのおどけた口調から探すのが面倒くさいと言っているのと同じだった。
慎吾にとってもそういうつもりでの発言だった。
しかし素直な若菜は言葉どおり受け取った。
無駄な体力を消費せず、互いにすれ違ってしまったりしないよう、このアンミツ屋で待ち伏せをする。
効率的で素晴らしいアイディア。
とても自分では思いつけない…と、そんな事を考えていた。
「ところでさ…」
「はい?」
「若菜ちゃん、好きな人いる?」