若い草花は輝いて



「さて、若菜にもう一つのプレゼント〜」
先ほどポケットから取り出した写真の一枚を、若菜の眼前に置く。
そこには、上半身裸に長ズボン、
そしてエプロンを身にまとい、背中をこちらに向けて、
『Don’t take out!』のプレートをかけられた
七瀬の姿があった。
左手にフライパン、右手にフライ返しを持ち、
そのフライ返しを、恥ずかしそうに赤面した可愛らしい顔の、
何か言いたげな口元へと当てている仕草が愛らしい。
しかもその細く綺麗な生腕に、小さく滑らかな可愛い背中、
女の子のような顔と仕草。
そんな七瀬に、女の子たちどころか、
慎吾たち男連中の目線でさえも釘付けになる。
「う、う、Uwaaaaaaaaaaa〜〜〜〜〜!!!
こんなの、いつ撮ったのさ!?」
「この、可愛いポーズをとった決定的瞬間を逃す美月様だと思って?」
「いや〜ん七瀬くん、可愛いわ〜。
もう、いたずらしたいくらいや。
で、なっちゃん(七海のニックネーム)ここで何しとるんや?」
ライムが指差した先──七瀬の奥に、小さく七海が写っている。
崩れた表情で、『な、七瀬っ!?』と言っているようだ。
自分の弟がそんなマニアックな格好をさせられているのだから、
当然と言えば当然だろう。
「だって、いきなりそんな格好してるの見ちゃったから、驚いちゃって」
「それにしても…神崎くん、女の子の私より可愛いんじゃ…」
「あたしもそう思う」
「ええ、本当ね…女の子としての自信をなくしそうだわ」
「よかったわね七瀬、可愛いって言ってもらえて」
「シクシクシクシク……」
「みづきっちゃん(美月)、今度は正面から頼むわ。
白く綺麗な胸、細く滑らかな鎖骨がうちの萌えポイントやねん。」
ライムに向け、美月はグッと親指を立て、OKサインを示す。
「こ、今度なんてないよっ!もうっ…お婿にいけない…」
「うちがもらったるから、大丈夫やて♪」
「そういうことじゃ…」
七瀬は、その大きな瞳に大粒の涙をため、
ポタポタとテーブルの上にこぼしていく。
「っと、もう1枚あったんだっけ」
美月は、慎吾の方を見ると、ニヤッと嫌な笑みをこぼす。
「お前、まさか…」





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