若い草花は輝いて
「た、太陽!?」
「な、何を考えているんだきみは!?」
そう、そこに立っていたのは、紛れもなく川崎太陽本人だった。
ただ違ったのは、かつて鷹宰祭の『ミス・ミスター鷹宰』
で着用していた、フリフリドレスを身に纏っているということだ。
もしものために、持ってきていたのだろうが、
その姿は先ほどの慎吾のエプロン姿よりもさらに破壊力抜群で、
見るものすべてを石化してしまった。
たとえどんなに場が盛り上がっている時の余興であろうと、
一瞬にして冷めていたことは間違いないだろう。
「うっふ〜ん、太陽子ちゃんよ〜ん。
女の子なんだから、お・い・わ・いして〜ん♪」
「おえええええ〜〜〜〜!!き、気持ち悪い…太陽、てめ…何考えてやがる」
「グッ、目の毒だ…早く着替えてきたまえ太陽!」
「これやからスポーツ特待生は…みづきっちゃん、記念に写真撮っとき」
「い、嫌よ、メモリが勿体無いわ」
太陽の突然の変貌ぶりに、七海、七瀬は声が出ないようだ。
二人、お互いの顔を見ては、変わり果てた太陽を見てを繰り返し、
何が起こっているかを確認するのに戸惑っているらしい。
「はぁ…この人が純粋だとか繊細だとか言ってたのがバカみたいだわ」
澪は、あきれ果てた様子で、手元にあったコーヒーに口をつける。
もう、これ以上付き合ってられないわ、と思っているのだろうが、
コーヒーをすするその口元には、うっすらとだが笑みがこぼれている。
「わっかなちゃ〜ん、俺──じゃねぇや、わたし、どお〜〜?」
太陽子が、若菜に向かってウインクする。
すると、今まで固まっていた若菜の唇が微かに動き出した。
「フフッ……アハハッ、アハハハハハッ!!
やだもうっ、太陽くんったら、面白い!
ううん、太陽子ちゃん、可愛いっ!
アハハハハハハハハ……」
「お…お…おっしゃ〜、若菜ちゃんの笑顔、げっと〜!!
おい見たか、若菜ちゃんのプリティスマイル!
ほら七海ちゃん、七瀬。
俺の女装見て若菜ちゃんが楽しそうに微笑んでくれたんだぜ。
二人も楽しそうにしてくれよっ!」
「きゃっ!?」
「うわっ、こ、来ないでよっ!姉さん、こっちへ!」
「ちょっ…あんた、何七瀬くんをいじめとるんよ!?
ちょい待ち、そこのバケモン!!」