ブラザー・パニック!






 放課後の中庭で、ハァハァと息切れを起こしている男女が4人。
 服や髪は乱れ、転んだのだろうかところどころ土が付着している。
 壮絶な死闘の残滓が、そこにはあった。
「さて…では気を取り直して、次のテストに移ろう…」
「…まだやんのかよ」
「当然…だ。俺の…ライムの、ため…やからな…」
 疲れの色を隠せないマークだったが、それでも気力だけはあふれ返っていた。
 ちなみにNANAとライムは、花壇を囲むレンガの上に座り込んで休んでいる。
(なんで俺がこんな目にあわないといけないんだ…)
 慎吾は今すぐ寮に帰ってベッドに倒れ込みたい衝動に駆られていた。
 もっともそんな事をすれば、マークに何をされるか解ったものではないが…。
「さっきのテストはライムへの理解を調べるためのものだ…。もっとも、結果は散々だったがな」
「悪かったな」
「次のテストでは…君の勇気と、ライムへの愛の深さをを試させてもらう」
「はぁ…」
「鷹宰学園のニワトリは凶暴な事で有名でな…」
「嫌な予感…」
「さて、ここにライムのハンカチがある。ライムが昔から愛用している大切な物だ」
「なんであんたが持ってんだ…」
「さっきの騒ぎの時、ライムが落としたから預かっていたんだ」
「…で、そのハンカチがどうかしたのか?」
 マークはハンカチを持って鳥小屋へ向かい、ギィッと少しだけドアを開いた。
 そして小屋の中心へ向けて、ハンカチを放り投げる。
「さあ、拾って来るんだ」
「………………」
「嫌なのか? それならそれで別にいいんだ。君にライムとつき合う資格がなくなるだけだからな」
「だぁかぁらぁ…つき合う資格がどうとか、兄貴が勝手に決めていいもんじゃねーだろ」
「しかしだな。ライムは純粋さのせいでNANA君に惚れてしまったという前科がある。
 だから君に対してもなんらかの間違いで惚れてしまった可能性がある以上…兄として放ってはおけない」
 ライムとつき合う気なんて、もちろん慎吾にはない。多分。
 だから別にテストなんて不合格でもいっこうにかまわないのだが…。
 それだと、ライムの恋は納得のいかない形で終わってしまう事になる。
 ライム…。ちょっとズレてるけど、一途で可愛いところもあって…決して嫌ってはいない。
 むしろ恋愛抜きで考えれば、慎吾はライムに好感を持っている。
 恋愛が入ると、これまた微妙なのだが…。
「解ったよ。やりゃあいーんだろ」
 慎吾はふてくされながら、鳥小屋の中へと入った。
 ニワトリ達を刺激しないよう細心の注意を払い、物音を立てず、忍び足で…。

 ガッシャガッシャ






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