ブラザー・パニック!






「…って、何してんだあんたはっ!!」
「見ての通り、鳥小屋の金網を思いっ切り揺らしている」

 ガッシャガッシャガッシャ

「んな事したらニワトリが暴れるだろうがっ!!」
「そのためにやっているんだ。ライムを手にするためのテストなのだから、これくらいの障害は当然だろう?
 それに今さらやめたって、もう遅い。ニワトリ達はとっくにいきり立っているぞ」
 ハッと周囲を見回してみれば、ニワトリ達は苛立ちをあらわに慎吾を包囲していた。
「コケッ…」
「コケコケッ…」
「コッコッコッ…」
「ま、待てお前等。俺は敵じゃな…」
「コケーッ!!」
「どわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 バサバサというニワトリの羽音や、ドタバタと人の駆けずり回る騒音が鳥小屋から鳴り響いた。
 疲れて休んでいたNANAとライムもそれに気づき、慌てて鳥小屋に駆け寄る。
「ちょ、ちょっとお兄ちゃんっ! この騒ぎはなんやのっ?」
「ああ、これはだな…」
「ああっ! ライムちゃん大変っ、慎吾君がニワトリさんに襲われてるっ!!」
「なんやてっ!?」
 鋭いクチバシと鋭い爪で慎吾の制服はボロボロになり、手には血が滲んでいる。
「痛ッ! 痛いって、マジ勘弁してくれっ! グハァッ!!」
「慎吾君っ!」
「お兄ちゃんっ! これはさすがにやり過ぎやっ!!」
「確かに…。まさかここまでニワトリが凶暴だとは思わなかったんでな」
「だいたい、なんで鳥小屋の中にっ…!」
「彼の勇気とライムへの愛を試すために、小屋の中に放ったライムのハンカチを拾いに行かせたんだ」
「なっ…うちのハンカチをっ!?」
「ライム。安心しろ、投げ込んだハンカチは…」
「うちのせいであの人が…。待っとり、今すぐうちが助けに行くっ!!」
 ライムは勢い良く小屋の中に飛び込んで、慎吾に群がるニワトリを追い払い始めた。
「ら、ライムっ!? 馬鹿っ! 入って来るんじゃないっ!!」
「さすがうちの惚れた男や。こんな状況でもうちの事心配してくれるんやなっ」
 ライムは慎吾に背中を向けたまま嬉しそうに笑い、ニワトリと対峙していた。






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