ブラザー・パニック!
ニワトリは新たな侵入者に興奮し、さらに凶暴さを増す。
このままでは2人が危ない。
そう判断したNANAとマークは、自分も小屋の中に入ろうとする。
しかしそう決意した瞬間、NANAは金網越しにある物を発見した。
「慎吾君っ! 私の方にハンカチがっ!!」
NANAの声にに振り返った慎吾は、NANAのすぐ前方にあるボロボロのハンカチを発見した。
思い切り地を蹴ってハンカチを拾い上げ、勢い余って金網に激突する。
ガシャンと大きな音を立てて金網が揺れた。
それでもNANAは金網から離れない。
「慎吾君っ!」
「NANA、さんきゅっ!」
金網を掴んでいるNANAの指を優しく撫でると、慎吾はきびすを返して走り出した。
「逃げるぞっ!」
ライムの腕を掴んで、出口へと走る。
しかし侵入者を逃がすまいと、ニワトリ達は2人を追撃する。
「ライムちゃん危ないっ!」
再びNANAは叫んだ。
慎吾が首だけ動かして振り向くと、ニワトリがライムの顔めがけて飛びかかって来ていた。
鋭い爪を光らせながら。
慎吾は思いっ切りライムの腕を引っ張り、バランスを崩してその場に倒れ込んだ。
「キャンッ!」
ギリギリでニワトリの攻撃をかわせたライムだったが、すぐにまた別のニワトリが襲いかかる。
慎吾は咄嗟にライムの上に覆い被さった。
ニワトリの容赦ない攻撃を、ライムの代わりに一身に受ける。
「うちの事はいいからっ! 早う逃げてっ!!」
「んな事出来るかっ!」
慎吾はライムを抱き起こし、またすぐ出口へ向かって走り出した。
背後から再びニワトリが飛びかかって来るが、慎吾は身を挺してライムをかばう。
「ライムっ!」
マークは鳥小屋のドアが勢い良く開き、手を伸ばしてライムを掴んで慎吾ごと外に引っぱり出す。
2人の身体が鳥小屋から出た直後、マークはすぐにドアを閉めた。
「コケッ! コケッ!」
「コケケーッ!」
ニワトリ達はガリガリとドアを引っ掻き、つつき、暴れている。
ホッと一息ついてから、マークはライムをきつく抱き締めた。