ブラザー・パニック!






「ライム…。無事で良かった…」
「お兄ちゃん、痛いって…」
 そしてボロボロの慎吾を、NANAが抱き締める。
「慎吾君…大丈夫? 早く保健室へ行こう」
「いや…保健室はマズイだろ。怪我の理由訊かれて正直に答えたら、停学になっちまうよ」
「そ、それじゃあすぐ寮に戻ろうっ! 早く手当をしないと、傷が化膿しちゃうっ!」
「あ〜、でも、テストは…?」
 慎吾は制服に付いたニワトリの羽根や埃を払いながら、マークの方を見た。
 マークはライムを抱き締めたまま、慎吾に微笑みかける。
「合格だ。君は身を挺してライムを守ってくれた…。さすが、ライムの惚れた男だよ」
「そりゃどうも」
 慎吾は疲れ果てた笑みを浮かべたが、ちっとも嬉しそうじゃなかった。
「あ、そうそう。ハンカチ返さないとな」
 慎吾はボロボロに汚れたハンカチをライムに差し出した。
「悪ぃ、こんなんになっちまって…」
「そんな、気にせんでええわ。こんなん洗濯すれば…って、これ…うちのハンカチやないで?」
「…へ?」
 まさかこれは別の誰かが落としたハンカチで、ライムのハンカチはまだ小屋の中に?
 そう思って、慎吾はゾクリと背中を震わせた。
 そんな慎吾の手から、マークはハンカチを取った。
「いや…、このハンカチでいいんだ。俺がライムのハンカチをあんな所に投げ込む訳ないだろ?」
「え? じゃあそれは…」
「俺のハンカチだ」
 してやられた。と、慎吾はますます疲労を積もらせガクリとうなだれた。
「…じゃあ、もう帰ってもいいよな?」
「あっ、待って…」
 ライムはマークから身を離し、慎吾を引き留める。
「あ…あの、ごめんな…。うちのせいで、こんな目に…」
「いいよ、気にすんな」
「そやけど…うちをかばって、そんな傷だらけになって…。そこまでせんでもよかったのに…」
「馬鹿。ライムはハリウッドスターになるんだろ? 顔や身体に傷を作っちゃマズイだろうが」
「あんた…そんな事まで考えて、うちを…」
 ライムは頬を朱に染めて、うっとりと慎吾を見つめた。
 こいつもこんなしおらしい面があるんだなぁと思うと、なんだかライムが可愛く見えてしまう慎吾だった。
 見つめ合う2人と見て危機感を感じたNANAは、慎吾の袖を引っ張る。
「ね、ねぇ…。早く寮へ戻ろうよ。私も寮の前まで付き添うから…」
「さんきゅ。それじゃライム、またな。傷の事はホント気にしなくていいから」
「気にせんでええやなんて…。あんた、ホンマに優しいな。そんなところがまた…」
「なんて男らしいんやっ!」






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