紫苑
「え…? 何、これ…」
「美月、自分の触った事ないのか?」
「そんな…嘘、だって彼は…」
「NANA…な、女の子なんだよ。俺に会いたい一心で、男装してまで学園にやって来たんだ」
「嘘…」
「嘘じゃない。なあNANA、そうだろ?」
あたしは首を傾け、神崎君の顔を見上げた。
手を服の外に出され、手首を交差させると、あたしを逃がすまいと力強く握り締める。
そして彼は…いや、彼女は愛しい人を見つめながら答えた。
「そうです。私は…あなたに会うために、この学園に来たの。
最初に思い描いていたのとはずいぶんと違ってしまったけれど、私は彼のものになれてとても幸せ。私は…」
愛しそうに、嬉しそうに、幸せそうに、少しだけ寂しそうに、彼女は呟いた。
「永遠に、あなたのもの…」
ズキリと胸が痛んだ。
あの神崎君が、鷹宰祭で会った神崎君が、友達思いのいい奴だと思えた神崎君が、こんな言葉を口にしている。
「NANAは良い子だな。俺の言う事は何でも聞く、従順で可愛いくて、Hな女の子だ…」
歪んだ誉め言葉を受け、彼女は頬を朱に染める。
「けど…ご主人様に黙って、あんな事をするなんてな…」
「あっ…」
先程とは打って変わって、ご主人様に叱られた子犬のように恐怖する神崎君。
いや…。事実、彼女はご主人様の犬かもしれない。
「NANA。俺はまだ許した訳じゃないからな」
「ご、ごめんなさいっ! あれはその、つい…」
「言い訳はもう聞き飽きた。NANA…、後でたっぷりお仕置きしてやるからな。ライム、お前もだ」
「うっ…」
壁にもたれかけていたリーガンさんの表情も、神崎君同様に曇る。
「美月。この2人はな…、俺に黙って澪をいじめてたんだよ。まあ、あの2人に嗜虐の快感を教えた俺にも責任はあるか。
澪が俺に可愛がられるのを見て、嫉妬したらしい。それで憂さ晴らしに、澪を勝手に調教していやがった…。
でも安心していいぞ。美月が奴隷になった後、お前を調教するのは俺だけだ…」
ジィッと音を立てて、あたしのブラウスのチャックが下げられる。
「冗談じゃ…ないわよっ! 誰があんた何かの奴隷になるもんですかっ!!
むしろあたしがあんたのご主人様に言いつけてやるんだからっ! 千尋さんに言えば、あんたなんか…」
「だから…さ。それをさせないために、こうしてるんじゃないか」
ブチブチッという音が、あたしの胸元で鳴り響く。ブラウスのボタンがちぎれ飛び、床を転がった。
フロントホックの白いブラジャーがあらわになる。
突然冷たい外気に晒された事と恐怖のせいで、背筋がゾクリと震えた。
「へぇ。ずっと一緒だったせいでかえって解らなかったけど…。美月って、結構大きかったんだな。
さすがにライムには負けるが、NANAと同じくらいか? 俺のを余裕で挟めそうだな…」
「ちょ、ちょっと…あんた、本気で、あたしを…」
「当然だろ?」
口元だけは昔のように優しく微笑み、氷のように冷たい瞳で見下ろす。
「さっきはお仕置きとして、俺が澪を抱いているところを見せつけてやったけど…。
今度は美月を抱いてるところを、あの2人にたっぷり見せつけてやるとするか…」
意地悪い言葉を聞かされ、神崎君とリーガンさんは悔しそうにあたしを睨みつける。
「あの2人…な。俺が澪を抱いてるのを見て欲情しちまってな。我慢出来ず、2人で慰め合ってたんだ」
「ご、ご主人様…」
「その事はバラさんといてぇ…」
「事実だろ。それに奴隷がナニをしたかを、ご主人様が誰にどう言ってもかまわないだろ?」
指が、手慣れた手つきで谷間のホックをはずす。
あたしのおっぱいが、プルンとブラジャーから解き放たれた。
「小さくて可愛い乳首だな。今度はこれが、あの2人のオカズになるのか」
「そ、そんな事…言わないでよぉっ!」
叫ぶと同時に、あたしの双丘は鷲掴みにされる。
円を描くようにこね回され、時折突起した部分を摘み上げられ、電気のような快感が走った。
幼馴染みの手のひらの中で、あたしのおっぱいはグニグニと淫猥に形を変える。
「あっ…や、やめ…」
「嫌がる割りにはずいぶんと気持ちよさそうだな。どうだ? 自分でするのと、俺にされるの。どっちが気持ちいい?」
「あぁ…」
胸を揉みしだく手から逃れようと、あたしは無意識に身体をよじらせる。
けど、それはもしかしたら、快感で身をよじらせていたのかもしれない。
熱い吐息が朱唇から漏れた。
右側の乳房を揉んでいた手が、ゆっくりと這うように下へと降りていく。
脇腹を撫で、スカートに潜り込み、びしょ濡れになったパンツの中へと侵入する。
「やっ…。そこ、は…」
秘唇をそっと撫でられると、胎内から熱いものが込み上げ、ドッと蜜があふれた。
そしてゆっくりと、細い指が肉壁を割って進み出す。
「あうっ…んっ」
熱く蠢動する淫壁が、幼馴染みの指を奥へ奥へと飲み込み、貪欲に快楽を求める。
自分でした時の数倍の快感が、あたしの身体を駆け巡った。
全身が燃えるように熱い。息が苦しい。視界がかすむ。
指はあたしが感じる所、望む所を、的確についてくる。
まるであたしの身体を知り尽くしているみたいに…。
「美月、見ろよ。NANAとライムの奴、羨ましそうにお前を見ているぞ」
「い、いやぁ…。見ないでよぉ…」
彼女達があたしをどんな目で見ているかなんて、確認したくない。
ぎゅっと瞳を閉じ、あたしは顔をそむけた。
刹那、
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!」
さらにもう一本指が肉壺へと強引に押し込まれた。
痛みと快感が入り混じり、頭を掻き乱す。
目を見開くと視界が白み、息がつまった。
「くっ…ううっ、んっ…」
身体を硬直させ、呼吸を整える。胎内の指に、動かないでと願いながら。
少しずつ呼吸が落ち着き、痛みがやわらいできた。それと同時に、膣内がジンジンと熱を持ち出す。
ゆっくりと、深く息を吐く。
かすむ視界の中、神崎君が涙を浮かべながら歯を食いしばって、あたしの瞳を覗き込んでいた。
――そんな目であたしを見ないで。あたし、何もしてないのに…。
罪悪感が胸を責める。
あたしは彼女に話しかけようと、震える唇を開いた。
何を言おうとしているのか、自分でも解らない。自然に言葉をつむげる気がした。
けど、それよりも早く…。
幼馴染みの親指が、充血した淫芽に触れる。
「うぁっ…あぁぁっ!!」
熱く痺れるような快感が、電気のように肉芽から脳へと流れ、視界が白濁した。
途切れ途切れに吐息が漏れ、身体がピクピクと痙攣する。
イヤ…。このままだとあたし、変になっちゃう…。
「美月」
耳孔に、あいつの声と共に熱い息が流れ込んでくる。
いつの間にか、彼はあたしの耳元に唇を寄せていた。
「イキそうだったら、我慢しなくていいんだぞ」
「誰っ…が、イキそう…だって、のよ…」
「相変わらず強情な奴だな…。ライムを堕とした時を思い出すよ」
チュッと耳たぶにキスをされると、忘れていた愛おしさが込み上げてくる。
記憶を掻き乱され、懐かしい笑顔が脳裏に浮かぶ。
優しい笑顔。
優しい…、
「さあ、思いっ切りイッちまえよ」
冷笑。
いたぶるように、あいつは耳元で囁いた。
突如あたしの肉壷の中で動き出す2本の指。
膣奥へと進入してきたかと思えば、勢い良く引き抜かれ、また挿れられる。
抽挿を繰り返しながら、嗜虐の指はえぐるように回転を加え、牝壺を翻弄する。
「あっ…。くぅっ…んんっ! はぁ…あ、いやぁ…あっ…」
「意識してか無意識にかは知らないけど…。お前、自分から腰を振ってるぞ」
「うそぉ…嘘よぉ…。あたし、そんな…ひゃんっ!」
肉豆を親指ではじかれ、あたしは腰を跳ねさせた。
恐る恐る視線を下へと向けると、あたしははしたなく腰を上げ、揺すり、快楽をむさぼっている。
「嘘…こんな、あたし…は…。あっ…あぁんっ!」
「いいぞ美月…。こうしていると、お前の肉が極上だとよく解る」
目頭が熱くなる。心臓が喉から飛び出しそう。子宮がズキズキと疼く。
若菜に隠れ、密かに行っていた秘戯の時ですらありえなかった高まり。
過去に経験した絶頂より強烈な快楽に抱かれながら、まだまだ昇っていく。いや、堕ちていく?
蠢動する淫肉を荒々しく責め立てられ、じゅぷじゅぷという淫蜜の音が身体を通って鼓膜を震わす。
そして2つの声。
あたしのあえぎ声が、神崎君のうめき声と重なる。
ポツリと、あたしの頬に涙が落ちた。
下唇を噛み締め、あたしを見下ろす神崎君の双眸が、胸に痛い。
「最高だ…。美月。早くお前を犯したい、処女を奪いたいっ!」
声高々と叫ぶと同時に、2本の指が秘肉を捻り上げ、親指が肉芽を押しつぶした。
「そしてお前を…」
あたしの肉を挟んで、外と中から快楽の肉壷を責め立てる。
「俺だけの…」
子宮から、熱く焼けるような衝動が迫り上がってきた。
「モノに」
視界の中で白いものがはじける。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
身体が軽くなり、無重力の海に放り出されたかのような錯覚に襲われた。
意識が白濁し、ドロドロに溶けてしまう。
快楽という電流が子宮から脳へと流れ込み、身体を芯から痺れさせる。
今までに感じた事のない絶頂に、あたしはすっかり溺れてしまっていた。
「NANAやライムに見られてるってのに、こんなに感じちまう淫乱だったなんてな。知らなかったよ」
胸を引き裂く嗜虐の言葉すら、今のあたしには愛の囁きのように聞こえた。
牝を狂わせる魔性の指が、あたしの恥裂からヌルリと引き抜かれる。
「あっ…ん」
達して敏感になった秘華から、ドロリと花蜜が流れ出す。
すでにあたしの下着は自らの蜜でびしょ濡れになり、ベッタリと恥丘に貼りついていた。
そしてショーツ1枚では吸い切れなかった快楽の印は、スカートにまで大きな染みを作っている。
かすむ視界の中、陵辱者の冷笑と共に、あたしの女の部分を犯した手が映る。
「美月、見てみろよ。こんなにびしょ濡れだぞ」
自慢げに、彼はあたしの頬に愛液を塗りたくった。そして朱唇に指を割り込ませる。
トロリとしたものが舌に絡みついてきた。
「んぐっ…ふぅ。うぁ…」
「ずいぶんとしおらしくなっちまったな…。さて、そろそろ俺も楽しませてもらうとするか…」
朱唇から引き抜かれた指が次に向かったのは、あたしのスカートの中。
びしょ濡れになって肌に貼りついたショーツが引き下ろされる。
ベッタリとした気持ち悪さが消え、外気の冷たい空気が心地よかった。
「美月のアソコ、キレイなピンク色してるぜ。使い込んでない分…NANA達のより可愛いかもな」
「そっ…そんなぁ…」
「使い込んでるんは、ご主人様のせいやないのぉ…」
「まあ…そうだがな。たまにはこういう…穢れを知らないものを汚してみたくなるんだよ」
彼等の会話が、とても遠い所でされているように思えた。
ああ…。あたし、汚されるんだ。
大好きな…、大好きだったあいつに…身も心も陵辱されるんだ…。
あたしも彼女達のようになってしまうんだろうか?
従順な牝奴隷に…。
快楽をむさぼり続ける日々。
この深く、暗く、熱く、甘く、身も心も溶けてしまいそうな快楽に…、すべてを…ゆだる。
それはとても魅力的に思えた。
牝の本能が求めている。もっと感じたい、もっと気持ちよくなりたいと、あたしの中で叫んでいる。
自分がこんなにも弱い存在だなんて、知らなかった。
ゴメン若菜。あたしみたいに強くなりたいって言ってくれていたけど、本当のあたしはこんなにも弱い。
若菜がいたから…強くなれたんだと思う。
そして…、あいつが幼馴染みでいてくれたから…。
「美月…。たっぷり調教して、Hな事しか考えられないいやらしい子にしてやるからな…。
安心しろ。お前を可愛がるのは、俺だけだ。NANAにもライムにも手出しはさせない」
ピクリと、あたしの腕を押さえつける神崎君が震える。
「えっ…」
あたしの耳にしか届かない小さな声を、漏らした。
彼女が何を思ったか…。そんな事を気遣う余裕なんて、あたしには無い。
迫り来る破瓜と堕落への恐怖に身体を震わせ、さらなる快楽への淡い期待を胸に抱き、静かに目を閉じた。
「おね…がい…。もう…やめて…、慎…吾…」
最後の抵抗。あきらめを含んだ呟き。
瞳にたまっていた涙が頬を伝う。
寒さに震える秘華は、ぬくもりという陵辱者を迎え入れるために華蜜をトロトロとあふれさせる。
胎内が疼く。もう何も考えられなくなるくらい、グチャグチャに掻き乱して欲しい。
正気を失うほどに。
悪夢が悪夢だと解らなくなるくらい。
いっそ理性を失い、本能にすべてをゆだねてしまった方が、どんなに楽か…。
あたしにはもう何も残されていない。
親友も、幼馴染みも。
心の拠り所を失ってしまったあたしにとって、幼馴染みへの従属は甘美な誘いに思えてしまう。
ふと、懐かしい笑顔を思い出した。
もう2度と見る事がないだろう、幼馴染みの笑顔を…。
快楽という地獄に堕ちるために、あたしは身体を弛緩させてその時を待っていた。
最後の一線を無惨に破られる、その瞬間を…。
永遠にも思える、けれど一瞬の時が流れた。
けれど、それはいつまで経っても訪れない。