秘密のParty Party REVENGE
ライムちゃんお勧めデートスポット2 映画館
「これはね、ライムちゃん一押しの映画なんだってっ!」
「へぇ。あいつ映画研究会に入ってたから、そういうの詳しそうだな。けど、ラブロマンスか…」
慎吾君はちょっと気恥ずかしそうに、映画のポスターから顔をそむけた。
そして隣に貼ってある別の映画のポスターで視線を止める。
海洋冒険物の映画で『まぼろしのひほう 水兵ねずちゅ〜の猛威』という作品だ。
主人公の女性船長が武器を手に立ち、背景には水兵ねずちゅ〜が大きく描かれている。
「もしかして、そっちの映画の方がよかった?」
「い、いや、そうじゃなくって…。えっと、2人切りで観るのは…ちょっと照れ臭いかなって」
「ボクと一緒じゃ…嫌なの?」
「そんな訳ないだろ。ただ、男2人で観る映画じゃないなぁ…って」
「ボク、女の子だよ?」
「そりゃ解ってるけど…学校帰りだからNANAも男子の制服だし、他人から見たら男同士だろ?」
「ボクはかまわないもん。それに、映画館の中は暗いから、男同士だって解らないかも?」
「そうかもな…。それじゃNANA、一緒に観ようぜ」
「うんっ!」
こうしてボク達は、一緒に館内へと入って行った。
公開されてからそれなりに時間の経ってる映画だから、席は半分も埋まっていない。
ボク達は真ん中辺りの席に座り、上演時間を待った。
照明が落とされた頃、ボク達の後ろの席で物音がした。
誰か座ったのかなと思って振り向くと、ミニスカートをはいた女性が座っている。
パンフレットを広げて読んでいたので顔は見えなかった。
(どうしてボク達の真後ろに座ったんだろう? 前に人がいると、邪魔じゃないのかな?)
と、ボクは首をかしげる。
だって他に席はいくらでも空いてるんだから、横に数席ずらせば見晴らしがいいと思うのに。
「NANA、何よそ見してるんだ? 始まるぞ」
「あっ、うん」
彼に声をかけられて、ボクはスクリーンへと向き直った。
映画のオープニングが始まる。
映画もクライマックスを迎え、主人公とヒロインは夕陽を背景に向き合っていた。
絡み合う視線。主人公の腕が伸び、ヒロインの肩を抱く。
2人の唇がしだいに距離を失い、ゆっくりと瞼を下ろす。
食い入るようにスクリーンを見つめていると、突如ボクの手にあたたかいものが覆い被さる。
ビックリして視線を向けると、慎吾君がボクの手を握っていた。
彼はボクに向かって恥ずかしそうに微笑むと、視線をスクリーンに戻す。
ドキドキと胸の鼓動が高鳴り、彼に伝わってしまいそう。
ボクはもう1度、握り合った手を見下ろしてから、映画の続きを見た。
主人公とヒロインの唇が、ちょうど重なる瞬間だった。
映画館から出ると、彼は太陽の光を浴びながら思い切り背伸びをした。
「面白かったな、NANA」
「うんっ。あんなステキな恋愛が出来るなんて、映画の2人が羨ましいなぁ」
「…確かに。俺達の場合…全っ然普通じゃねぇし」
「あ、でもね。キミとの恋愛は確かに普通じゃないかもしれないけど、ボクにとっては1番の恋愛だよっ!」
「…そっか」
慎吾君はボクの頭にポンッと手を乗せると、白い歯を見せてニッと微笑んだ。
そして少し頬を染めて、
「俺も、悪くないと思ってるよ」
ボクは嬉しさのあまり、彼の腕に抱きついちゃった。
夏の日射しと彼の体温でちょっぴり暑かったけど、ボクはへっちゃらだった。
そして慎吾君は周囲の視線を気にして、ボクを連れ慌ててその場から逃げ出す。