秘密のParty Party REVENGE






ライムちゃんお勧めデートスポット4 街向こうの公園


「懐かしいな」
 と呟きながら、彼はベンチに腰を下ろした。
 ボクも彼の隣に座って、少しだけ身体を寄せる。
「初めてデートした時、このベンチに女の子の服を着たNANAが座ってたんだよな。
 最初誰だか解らなかったよ。あの時のNANA、ホント可愛かったよなぁ」
「そう? えへへ…なんだか照れちゃうなぁ」
 嬉しいな、彼に可愛いって言ってもらえて。
 また女の子の服を着たら、喜んでくれるかな?
 うふふ。温子伯母さんにお願いして、とびっきり可愛いお洋服を買ってもらおっと!
 そして慎吾君と一緒に…。
「NAーNA、なぁにニヤニヤしてんだ?」
「えっ!? いや、その、な…何でもないから、気にしないでっ」
 ヤだ。私ったら、考えていた事が顔に出ちゃっていたの? 恥ずかしいなぁ…。
 けれど、彼が私の事を見ていてくれたんだ…って思うと、胸が熱い。
「キレイな夕陽だな…。それに、もう夕方なせいか周りに人もいないし…」
「う、うん」
「2人っ切り…だな」
「そ、そう…だね」
 意味深な口調で語る彼に戸惑い、私は思わず顔を伏せてしまった。
 視線を動かして周囲を見回すと人の気配は無い。
 ヤだ。なんだか、ドキドキしてきちゃった…。
 男の子の格好だと、慎吾君は人前であまり私にくっついてきてくれないけど…。
 周りに人がいなかったら、私が、男の子の格好でも…。
「NAーNA」
 私の考えを肯定するかのように、慎吾君は私の肩を抱き寄せてきた。
「あっ…」
 私の顎にそっと指を添えると、クイッと引っぱられて彼の顔が視界いっぱいに広がる。
 頬が熱くなるのを感じた。
「NANA、目を閉じて…」
「…うん」
 言われるがままに瞼を下ろすと、
 顎に触れる指のあたたかさが、
 ひと夏を精一杯生きるセミの鳴き声が、
 高鳴る鼓動が、
 そして彼の吐息が近づいてくるのが、はっきりと解った。
 彼の誕生日なのに、彼を喜ばせたいのに、彼にお礼がしたいのに、私がこんなにも幸せな気持ちになっちゃっていいのかな?
 私の唇に、柔らかくてあたたかいものが触れる。
 触れるだけの優しいキス。
 慎吾君…。あなたも私みたいに、キスをして幸せな気持ちになっているの?
 だとしたら私、すごく嬉しい。
 いつまでもこうして、口づけをしていたい…。
 いつまでも、ずっと…。

   ガサガサッ

 ふいに木々の揺らぐ音がして、慎吾君は慌てて唇を離した。
 そしてキョロキョロと首を回す。けれど人影は無い。
「…風か?」
 と呟く彼の表情は強張っていた。
「もしかして、誰かに見られちゃったのかな?」
「…多分、大丈夫だろ。とりあえず見える範囲に人はいないし、さっきのも風のせいだ。…と思いたい。
 けどやっぱり、ここでキスするのは危ないかな…」
「そうだね。残念だな、もっとキスしていたかったのに…」
 唇を尖らせながら、私は肩を落とした。
 ライムちゃんからこの時間、この場所は人がいないから…って聞いてきたのに。
 公園に建てられている時計を見てみると、門限までまだ時間があった。
 どうしようかな?
 ベンチに座りながらお話するのも楽しそう。
 早目に寮へ帰って一緒にCDを聴くのも悪くないなぁ。
「NAーNA。門限まで、まだ時間あるよな」
「え? う、うん。これからどうしようか?」
「そうだな…。俺、ちょっと行きたい所あるんだけどいいか?」
「もちろん。さっきから私があなたを引っぱり回してばかりだったものね、どこに行きたいの?」
「そこ」






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