秘密のParty Party FINAL






 考えた事も無かった。
 ううん、考えまいとしていた。
 恐かったから…。
 嫌われていたらどうしようって、思っていたから。
 会いたいという気持ちが無かった訳じゃない。
 でも、彼と会う覚悟なんて…私はまだ出来ていなかった。



 セミさんの鳴き声が、延々とリビングに流れている。
 時折カランという氷のぶつかる音が、慎吾君と温子伯母さんの席から聞こえた。
 麦茶の入ったコップの表面にはたくさんの水滴がついており、テーブルを濡らしている。
 対面の席に座っている七瀬は、さっきから一口も麦茶を口にしていない。
 もちろん、私も。
 いったい何を話せばいいんだろう? どう接すればいいんだろう?
 十数年もの間、一度も言葉を交わした事の無い、双子の弟。
 神崎家に災いをもたらす存在でありながら、離れから出て好き勝手やっている私をどう思ってるのだろう?
 挙句の果てに、私は…神崎家の別荘にまで遊びに来て…。
 なんて図々しいんだろう。
 私は、鷹宰学園に通わせてもらっているだけで…慎吾君の側にいさせてもらえるだけで、
 もう十分過ぎるほど恵まれているというのに。
 やっぱり怒ってるかな…? でも、そんな風には見えないし…。
 すっかり思考の泥沼にはまってしまい、私は何も言えなくなってしまう。
 ただうつむいたまま、たまにみんなの顔をチラチラと見るだけ。
 七瀬も似たようなものだった。比較的、私へ視線を向ける回数が多い気がする。
 けれど私の顔や眼を見る事は少なく、だいたい首から下を見てる。
 温子伯母さんからもらった真っ白なワンピースを気にしているようにも思えるけど…多分私の思い違いだろう。
 ただ無為な時間だけが、刻々と流れていた。
 せめて、慎吾君か温子伯母さんが何か言ってくれたら…。
 チラリと七瀬を見ると、彼は助けを求めるような視線を…慎吾君に向けていた。
 しばらくすると、慎吾君はガタリと音を立てて椅子から立ち上がる。
 そして首を窓の方へと向けると、彼は清々しい笑顔を浮かべた。



「海行こう」






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