秘密のParty Party FINAL
太陽の熱を吸収した砂浜が熱くて、私も七瀬もビーチサンダルを履く。
裸足で平気な慎吾君と温子伯母さんはすごいと思う。
単に、私達が海に慣れてないからなのかな?
慎吾君は黒のトランクスの水着で、今は砂浜に敷かれたビニールシートの上に荷物を運んでいる。
温子伯母さんは腰から膝まで届くパレオを巻いた、紫紺のビキニ。
歩くたびに揺れる豊満な乳房、くびれた腰から太股にかけての扇情的なライン…。
大人の魅力を全身からかもし出しており、時折慎吾君の視線が妖しくなっている…ような気がする。
ちょっとヤキモチ。
今はビニールシートの上に腰を下ろしていて、慎吾君と二言三言言葉を交わしている。
そして…七瀬。
彼は女の子のように肌が白く、華奢な身体をしていた。
もしかしたら、私より腕が細いかもしれない。
水着は色がブルーというだけで、慎吾君とまったく同じデザインの物だった。
偶然なんだろうか? それとも…。
「NANAー」
考えが深まろうとしたその時、シートに荷物を運び終えた慎吾君がこちらにやってきた。
「どうした? 何か元気無いけど…」
「や、やだなぁ。そんな事ないよ。ただ、この熱い砂浜を素足で歩けるなんて…慎吾君も温子伯母さんもすごいなぁって思って」
「…歩けないほどの熱さじゃないだろ? ま、NANAはこういうのに慣れてないから仕方ないのかな」
彼は爪先で足下をえぐり、砂の熱さを平気な顔で確かめる。
砂の感触が心地良いのか、ちょっぴり楽しそうに微笑んだ。
「ところで……その水着、似合ってるぞ」
「えっ?」
彼の視線が恥ずかしくて、私は咄嗟に腕で身体を隠してしまう。
私が今着ている水着は、昨日慎吾君が「1日早いけど誕生日プレゼントだ」って渡してくれた物なんだけど…。
屋外でこんな、肌のほとんどを露出した格好をしているだなんて…すっごく恥ずかしいよぉ。
白のハーフトップブラは胸の輪郭を強調し、胸の谷間までくっきりと見える。
鳩尾の部分は黄色いボタンが2つついており、水着の端っこは鮮やかなブルー。
動きやすくてスポーティで爽やかな雰囲気ではあるけれど、ちょっぴり変な感じ。
下は群青色の水着で、ズボンに似たデザインのホットパンツ。
ブラと同じデザインの黄色いボタンがアクセントになっていて、横にはポケットもついている。
股上は短く、へそから股間までの肌が上半分ほど露出しており、ちょっぴりHな感じ。
正直、この水着を初めて見た時は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
そしてこの水着姿を慎吾君に見られている今は…死ぬほど恥ずかしい。
ある意味、裸を見られる方がずっとマシ。
…まあ、裸は普段見せてるんだけど。
ってそういう問題じゃなくてぇ…。
「恥ずかしいから、あまり見ないで…」
私は羞恥で頬を朱に染め、うつむきながら上目遣いで彼に許しを請うような視線を向けた。
けれど彼はすごく嬉しそうに笑ってる。
…Hの最中に私が感じているのを見て喜んでる時と同じ笑みで。
「NANA…今すっげぇ可愛いぞ。照れた姿がまたキュートなんだよなぁ」
「ヤだ…そんな事、言わないでよぉっ…!」
頬を膨らませて抗議すると、彼は途端に悲しそうな顔をする。
「NANA…。俺からのプレゼント、嫌だったか?」
「え?」
「俺…NANAに似合うと思ってこの水着を選んだんだけど…。ゴメンな、NANAに嫌な思いさせちまって」
「そっ、そんな事ないよっ! 私、慎吾君から水着をプレゼントされて、すっごく嬉しかったんだからっ!」
「でも実際に着てみて、後悔してるんだろ? 無理しなくていいんだ。その水着が恥ずかしいなら、他に新しいのを…」
「そんなっ…! 私は慎吾君からもらったこの水着が…すっごく大切なんだよ!? だから、今のままで…」
必死になって水着をプレゼントされた喜びを伝えていると、急に慎吾君はニンマリと笑いだした。
「そーかそーか。NANAに喜んでもらえて、俺もすっげぇ嬉しいぞ」
さっきまでの悲痛な表情はどこへやら。
私の肩をポンポンと叩きながら、彼はとても軽い口調で言った。
「ホラホラ、そんな縮こまってないで胸を張れって。NANAの水着姿を温子さんにもビシーッと見せてやれ!」
「うっ…うん」
肩をグイッと引っ張られ、身体を温子伯母さんの方に向けられる。
温子伯母さんがニコニコと微笑みながら手を振ってきたので、私も手を振って返す。
もしかして私、ハメられた?
「よーっし。それじゃNANA、さっそく泳ごうぜ!」
「あ、うん」
続いて『泳ぐ』という美味しい餌を与えられたため、恥ずかしさより喜びが先立ち、少し楽になった。
さて、泳ぐとなると…やっぱり、アレが必要になってくる。
「温子伯母さーん。そこの浮き輪取って〜」
ビニールシートに置かれているピンクの浮き輪を指差すと、温子伯母さんはそれを取ろうと手を伸ばし…。
「待った。NANA…もしかして泳げないのか?」
「う、うん。だって、泳いだ事なんて、一度も…」
「そっか。温子さん、浮き輪はやっぱりいいです」
「え? で、でも。浮き輪が無いと、私…」
「安心しろ。俺がじっくり泳ぎ方を教えてやる」
「え…えっ!?」
あまりにも美味しい提案に、私の胸が大きく弾む。
泳ぎを教える…って、慎吾君が、私に?
手取り足取り…私のために?
初めての海に対する恐怖心は、あっという間に遥か彼方へと飛んで行ってしまった。
「よーし、それじゃ行こうぜ」
「はいっ!」
私の手を握り締め、慎吾君は波打ち際へと駆け出す。
そこには…波とたわむれる七瀬の姿。
慎吾君は七瀬の前で立ち止まった。
七瀬は戸惑うように、私を見る。
心臓が、とても大きく脈打った気がした。