秘密のParty Party FINAL
紅い西日に照らされる寝室のベッドの中、弟の寝息がようやく安らかになった。
「多分疲れたんだろ。休憩を混ぜながらとはいえ、何時間も泳ぎの練習してたんだし」
七瀬をベッドに運び終えた後、慎吾君はそう言った。
それから「NANAのせいじゃないよ」と慰めてくれたけれど、やっぱり私に責任があると思う。
私が張り切りすぎちゃったから、七瀬に無理をさせてしまった。
七瀬が目覚めたら、すぐに謝ろう。
でも、いつまで経っても謝る心の準備が出来ない。
まだ目覚めないで、まだ目覚めないで…。まだ準備が出来ていないから。何て謝ればいいか考えてる最中だから。
そう頭の中で繰り返しているうちに、時間は刻々と過ぎて行く。
気がついた時には日が暮れていた。
弟の安らかな寝息は、耳をすませなくては聞こえないほど小さい。
セミさんの鳴き声にさえぎられる、小さな呼吸。
今まで気づかなかったけど、セミさんの鳴き声ってこんなに大きかったんだ。
もう少し静かな方が寝心地はいいかもしれない。
窓を閉めた方がいいかしら?
でも澄んだ外気までさえぎってしまう。
新鮮な空気を入れた方がいいって、慎吾君が開けた窓だもの。今のままの方がいいよね。
「…ここは?」
窓の方へと曲げていた首を、かすれた声の源へと戻す。
わずかに開かれている七瀬の眼と、視線がぶつかった。