秘密のParty Party FINAL
長い抱擁の後、疲れの取れた七瀬と一緒に階下へ向かう。
階段を半分くらい降りた所で、ふいに七瀬は立ち止まった。
「七瀬?」
弟より二段ほど下の段で私も足を止める。
「あっ…あの、言うのが遅くなってしまったけれど…その…」
「なぁに? 言いたい事があるのなら、遠慮せず何でも言っていいのよ? 私達は姉弟なんだから」
七瀬を安心させるように、出来るだけ優しく微笑む。
まだちょっぴりぎこちないけれど、七瀬への想いが伝わるように。
「えっと…その…そのワンピース…」
「え?」
言われて、私の身を包んでる純白のワンピースへと視線を下ろす。
去年のお誕生日に温子伯母さんから贈ってもらった、大切なプレゼント。
「…その、ワンピース…だけど…」
「うん」
「………………と、とてもよく似合ってますよ」
「ありがとう。私も気に入ってるんだ」
そう弾んだ声で返すと、七瀬はなぜか自分が褒められたかのようにはにかむ。
そういえば去年のお誕生日、七瀬も温子伯母さんから何かプレゼントをもらったりしたのかな?
ちょっと訊ねてみようと思った矢先、七瀬は階段を降り出し私の隣を通り過ぎた。
「いっ、いっぱい泳いだせいか、お腹が空きましたね。早く行きましょう」
「あ、うん、そうだね。ところで七瀬、私達姉弟なんだから敬語は使わなくていいのよ?」
「す、すいません。えっと、まだ慣れてなくて、つい…」
照れているのだろうか、七瀬は早足で階段を下りる。
私も少し早足で追いかけ、居間のドアの前で追いついた。
姉弟並んでドアを開ける。
夕飯の匂いが香ると同時に、食卓についている2人の視線が私達に向けられる。
そして寄り添うように並んで居間にやってきた私達を見てカラカラと笑い出した。
「まさかここまで上手くいくとは思わなかったなぁ」
「さすが慎吾さんの考えた作戦ですね。私ではこんな風に2人を仲良くさせる事なんて出来ませんでした」
私は弟と顔を見合わせた後、2人に向かって同時に言う。
「作戦…って、どういう事なのっ!?」
「作戦…って、どういう事ですかっ!?」
それを聞いた2人の笑いは、より大きさを増した。
「ハハハ。やっぱ双子だな、同時に同じ事言ってら」
「これなら私達が仕組まなくても仲良くなれていたかもしれませんね」
「結局俺達がやったのは、せいぜい2人が和解するまでの時間を短くした…って事くらいでしょうか?」
「何はともあれ、七海、七瀬、良かったわね」
大好きな2人のキラキラと輝く微笑みの前に、私の反骨心が折れてしまいそうになる。
けれど私はずいっと前に出て、頬を膨らませた。
「もうっ! いったいどういう事なのか説明してよぉっ!」
「解った解った、ちゃんと説明してやるから。とりあえず2人とも座れよ」
と彼が勧める食卓の席は、慎吾君と温子伯母さんの対面にある隣り合った席だった。
七瀬と並んで座るのはちょっぴり照れくさいけど、嬉しくもある。
私達が席につくと、慎吾君は意地悪そうな笑みを浮かべながら今回の作戦を話し出す。