WEIGHT BUST WAR!!〜こんなボクだって男のコ〜


「あうっ!!!」
またも、ボクのお尻に衝撃が走った。
佐伯さんが座ったまま、シーソーは微動だにしなかった──
つまり、ボクより佐伯さんの方が重たかったことが証明されたことに
不満を感じ、パッと飛び降りられたからだ。
そんな、自分の方が男の子のボクより重いからって、
パッと飛び降りるのだけは勘弁してほしいよぉ。
「美月ちゃんも、七瀬より重かったんだ〜。
でもしょうがないよね、七瀬は小さくて細いから。」
「そうよね〜、七瀬くんは女の子並に小柄だもんね〜。」
二人とも、笑顔だ。
けど、その後ろには何やら黒い邪念が渦巻いているように見えて仕方がない。
きっと、心の奥底では『あんたよりは、私のほうが軽いに決まってるわ』
とか思っているんだろうな。
「ふぅ、見てられないわね。
さぁ神崎くん、次は私が相手をしてあげるから、そっちに乗って頂戴。」
「う、うん。」
須藤さんに言われるがままボクはシーソーに乗る。
……なんで乗っちゃったんだろう??
「じゃあ、私も乗るわね。」
さっきの二人のように脚を揃えて腰を下ろす。
さすがに『氷の美女』と言われるだけあって、優雅な座り方というか、
単純に、綺麗な座り方だな、と思う。
まるでそう、人形のような…。





「にゅぅっ!!」
本日三度目の衝撃。
さすがに『氷の美女』と呼ばれるだけあって、
なんの躊躇もなく須藤さんは飛び降り、
ボクは須藤さんの行動に反応する間もなくお尻にダメージを負った。
もしやとは思うけど…これって『イジメ?』
「『にゅうっ!』だってよ。可愛い泣き声だな、七瀬〜。」
「うむ、こういう口癖は一種の『萌え要素』だからな。
これでキミも立派な萌えキャラだぞ、七瀬くん。」
「だ、大丈夫か七瀬!?太陽も光も、そんなこと言ってないで心配の一つでも
してやったらどうなんだよ?」
ううっ、太陽くんも伊集院くんもひどいや。
それに比べて慎吾くんの優しいこと。
だからボク、慎吾くんのこと大好きなんだよね。
ああ、それにしてもお尻が痛い…。
「ひ、ひどいよ須藤さんまで。
ボクは何にも悪いことなんてしてないのに。」
これ以上喰らってたまるものかと、
ボクはすかさずシーソーから逃げる。
「女の子として、仮にも、一応は男の子である貴方に体重で
負け──もとい、勝つわけにはいかないのよ。
先の2人が貴方に勝ってしまったから、私はどうかと思ったんだけど
結局勝ってしまったわね…なんだか悔しいわ。」
『仮』、『一応』…ちょっと切ない響きだ。
こんな細っこくて小さい体をしてはいるけれど、
ボクだってれっきとした男の子なのに。
「あ〜もう、あんたらさっきから何やっとるんよ!?
七瀬くんをいじめて、そんなに楽しいん?
ウチら女の子は、胸やお尻の分重たいんやから、
女の子並に小柄で線の細い七瀬くんより重たくて当然やろ!?
むしろ、重い分胸が大きいっていう何よりの証拠ちゃうん?」
そうそう、ライムちゃんの言うとおりだよ。
ボクは女の子並に小柄なんだから、
胸やお尻の分、女の子たちの方が重くてとうぜ───
言ってて、虚しくなってきた。
せめてここにいる誰かよりも重くないと、
ボクの『漢(おとこ)』としての立場というか、プライドというか、
そういうものが危うくなってくる。
かと言って慎吾くんや太陽くん、光くん、
姉さんに須藤さん、佐伯さん、胸の大きさで言えばおそらくライムちゃんも。
みんなボクより重いんだよなぁ…
と、そこで樋口さんがボクの目に入ってきた。
この人なら、他の女の子達より胸がちいさ…控えめだ。
「樋口さん、どうですか?ボクとシーソーしませんか?」
なんだかナンパしてるみたいだ。
『ボクとお茶しませんか?』みたいな…。
光くんじゃあるまいし、ボクにはこんなセリフ似合わないよ。
「え、わ、私ですか?」
う〜ん、と小首を傾げ少し考えたのち、
少しおどおどしながらもボクの反対側へ移動する。
それを確認した後、ボクも同時にシーソーへと腰を下ろす。
よし、これでボクが勝てば万事解決っ!






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