WEIGHT BUST WAR!!〜こんなボクだって男のコ〜
「………………垂れちゃうもん(ボソッ)」
「「「!!?」」」
言っちゃったよ。
最大の禁句を、言っちゃったよ。
「わ、若菜…!?あんた、何を言ったかわかってんの!?」
「そうだよ若菜ちゃん!言っていいことと悪いこともわからないの?」
「二人の言うとおりよ、樋口さん。もう一度、考えてごらんなさい。
自分が何を言ったのか──」
「フンッだ。
将来おばあちゃんになったときなんて、
孫の頬を垂れたお乳でビシビシ叩いて『ほ〜ら、おっぱいの鞭よ〜』とか言うんだから。」
「「「!?!?!?」」」
あまりの衝撃発言に、姉さんたちは顔を硬直させる。
太陽くんなんて、口に手を当てて『あわわ…』とか言ってるし。
さっきから情けないなぁもう。
一応『彼女彼氏』の仲なのに。
「若菜!!」
大声を張り上げ、樋口さんの肩に掴み掛かろうとする佐伯さん。
けど、そんな佐伯さんを尻目に、樋口さんは太陽くんへと駆け寄っていく。
「きゃっ…助けて、私の彼氏の太陽くんっ。」
「!!わ、若菜ちゃんっ!」
そんな樋口さんを、太陽くんは熱く、そして暑苦しく抱きしめる。
「大丈夫、俺がしっかり護ってやるからなっ!」
「うんっ…ありがとう。」
ジッと上目遣いで見上げた後、ちっさな頭をトンッと太陽くんの胸に預ける。
とても男の子が苦手だったころの樋口さんと同一人物とは思えない仕草だ。
男の子が悦ぶポイントを完全に把握しているとしか思えない…。
「フフッ、どんなに胸がおっきくても、スタイルよくても、
見せたり触らせたりする相手がいないんじゃ、宝の持ち腐れだもんねっ♪」
「「なっ…!?」」
「あ、私は慎吾くんがいるもんねっ♪ねぇ慎吾くんっ!」
「あ、ああ。そうだとも。だからこっちにおいで、NANA。」
姉さんは、素直に慎吾くんに甘えに向かう。
「この裏切り者〜!」
「まったくだわ。」
二人の非難など聞こえていないかのように、甘え続ける。
これで樋口さんの敵が一人減ったわけだけど…。
「ねっ、太陽くん?女のコは、胸じゃないわよねっ?」
「おう、あたり前田のクラッカーだぜ。やっぱ、
若菜ちゃんみたいに護ってあげたくなるしおらしさ、可愛らしさが重要なんだよ。」
「そんなブリブリしたコのどこが護ってあげたくなるってのよ!?」
佐伯さんが、樋口さんをビシッと指差す。
ああ、これが話にきく『修羅場』なんだろうか?
「ひ、ひどい美月ちゃん…ねぇ太陽くん、私、そんなにブリっコかなぁ?」
「否、そんなことは断じてない!」
樋口さんが、佐伯さんに向かって小さな可愛らしい舌をペロッと出してみせる。
うわ、可愛い!思わず抱きしめたくなってきた。
けど、なんだかもう、違うキャラになってるよ。
「くっ…もう、許さないわよ〜!いくわよ、須藤さん!!」
「きゃっ…太陽くん、私を連れて逃げてっ!
でないと私、またシーソーに乗せられちゃう!」
「よし、いくぞ若菜ちゃん!!
くうっ…つきあいはじめて早数ヶ月。
ついに手を握ることに成功したんだな。さっきなんて抱きしめちゃったし!!
き、き、kissまであと少しっ…あと少しだっ!!」
樋口さんの手をとり、駆け出す太陽くん。
その顔はだらしないほどににやけている。
顔に似合わずウブなんだなぁ、と改めてスポーツ特待生の不器用さを思い知る。
けど、何だか樋口さんも佐伯さんも、須藤さんも…
顔は楽しそうに笑って見えるんだよね。
もしかして、口でいうほどいがみ合っていないのかもしれない。
「なんか…わけわからん展開になったなぁ。
光、七瀬、ついでにライム、もうそろそろ帰ろうぜ。」
こうしてボクらはそれぞれ寮に帰ることになった。
道中、『ついで扱い』されたライムちゃんが、慎吾くんに掴みかかりながらも。