人魚姫NANA





「んー、いい天気」
 海で遭難してからだいぶ体調のよくなった王子様は、気分転換にと散歩に出かけました。
 お供の者を連れず、こっそりと。
「ったく。城じゃ美月がうるせぇしなー」
 海岸に差し掛かった王子様は、ふと隣国の海辺に打ち上げられた日の事を思い浮かべます。
「ありゃさすがにヤバかったなぁ、下手したら死んでたぜ。姉貴がいるから跡継ぎ問題は何とかなりそうだったけど。
 それにしても、あんな綺麗な子に助けられるだなんて……俺ってラッキー?」
 自分を助けてくれた黒髪の美女を思い浮かべ、王子様の頬がニヤけます。
 けれど、ふいにある疑問が湧き起こってきました。
 自分を助けてくれたのは、本当にあの美女なのだろうか?
 別の誰かが助けてくれたような気がする、なぜだろう?
「う〜ん……むぅ、ぬぁ〜……解らんっ。なぁんかのどに魚の骨が引っかかった気分……ん? あれは……」
 頭を捻っていた王子様は、浜辺に打ち上げられている人影を見つけました。
 長い髪が陽光を浴びてきらめいています。
「たっ、大変だっ!! おーいっ、大丈夫か!?」
 慌てて駆け寄った王子様は、倒れている人を起こしてさらにビックリ。
 倒れていたのはとても可愛らしい女の子ではありませんか。
 今まで日の光を一度も浴びた事がないような、透き通った白い肌がバッチリ見えます。
 どれくらいバッチリかというと女の子特有の柔らかい膨らみやら曲線やら何やら。
 王子様の心臓がバクバクと脈打ちます。
(なっ、なっ、何で素っ裸なんだァー!?)
 その叫びはあくまで心の中でのものでしたが、それが通じたのか女の子が目を覚ましました。
 苦しそうに息を漏らしながら、震える瞼をゆっくりと開きます。
「大丈夫……か?」
 とりあえず声をかける王子様。
「……!!」
 パッと目を見開くと、わなわなと震えながら王子様にしがみつく女の子。
 柔らかい胸が王子様の硬い胸に押しつけられました。
「うおっ!?」
 ふにふにとした理性を溶かす感触に戸惑う王子様。
 顔なんか真っ赤にしちゃって、嬉しいような困ったような曖昧な顔をしています。
 と、そこへ。
「王子ぃ〜! そこにおられましたか、勝手にいなくなられては困り……ま……」
 馬を駆って現れた侍女美月。
 王子様が裸の女の子を抱いているのを見て、プチン、何かがキレました。
「慎吾ォー! あんたいったい何してんのよ!?
 王子っていう自分の立場と責任と身分とその他もろもろ理解してんのっ!?」
「誤解だァー!」
 美月の馬は真っ直ぐに王子様と女の子に向かい、器用に王子様の顔面だけを蹴飛ばしました。
「うわらば!!」
 奇妙な悲鳴を上げて吹き飛んだ王子様を、女の子は慌てて追いかけ抱き起こしました。
 半死半生の王子様が一瞬の空白から目覚めると、目の前には女の子の大きな二つの膨らみが目の前に。
 その頂点には桜色の突起とかあったりなんかして。
「わ……我が生涯にいっぺんの悔い無し。ガックーン」

 王子慎吾、死す。



人魚姫NANA
おしまい







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