秘密の日記を見ませんか?〜美月の場合〜


―― CASE V ――
親友 樋口若菜



無事日記を返し終える事ができた。幸い須藤さんもリーガンさんも、日記紛失に気づかなかった。
ああ……なんかドッと疲れが押し寄せてきた。
ルームメイトの若菜がお風呂に行こうと誘ってきたけど、あたしは断った。
しばらく部屋でグッタリして、その後お風呂でサッパリしようと思ったから。
若菜は一人でお風呂に行き、あたしは机に突っ伏しグッタリした。
大きなため息を吐いて、そろそろお風呂に行こうかと起き上がったその時である。
何気なく若菜の机の上に視線を向けると、一冊のノートが置かれていた。
いや、ノートと呼ぶよりは本に近い。しかも鍵つき。しかも鍵開いてるし。
ある予感に導かれ、本を手に取ってみる。予感的中。
ルームメイトの、あたしの夢を応援してくれる親友の、若菜の日記だった。
あたしは自然と日記を開いていた。若菜の秘密を知ろうとか、そういう気持ちはまったく無かった。
なのにどうして開いてしまったのだろう?
脳が疲れ果てていて、自分が何をしているのかよく解らない。
けれど最初のページに書かれている文字は、あたしの脳を覚醒させた。

若菜と美月ちゃんと橘君の愛の日記

……いや、その、若菜が慎吾の事を好きだって事は知ってます。はい。
けどね、さっき読んだ2つの日記のせいか、怪しさをひしひしと感じちゃうんだけど。
ああ、ダメ。まだ引き返せる。
これは若菜の日記なのよ?
あたしの事を信頼してくれている親友の日記なのよ?
あの純朴な若菜がどんな日記を書いてるかなんて、読まなくても想像がつくわ。
自分の想像と違っていたら?
人の気持ちなんて解らないじゃない。
若菜の本当の気持ちを知る、またとないチャンスなのよ?
裏切るの? 親友の日記を覗くだなんて最低の行為。駄目。日記を閉じるのよ美月っ!

――パラリ

あたしは日記をめくった。
恐怖で瞼をぎゅっと閉じてしまう。
恐る恐る、あたしは瞼を上げた。
少しずつ明るくなる視界。
文字が見える。見慣れた文字。丸々とした女の子らしい文字。若菜の文字。
文字ではなく文章と認識する事で、日記の内容を把握する。



○月×日(月)

今日は大好きな美月ちゃんから、橘君のお話を聞いた。
自分では気づいてないのかもしれないけど、橘君の事を話す美月ちゃんはとても幸せそう。
改めて、私は美月ちゃんと橘君が大好きなんだなぁと思う。
最近は須藤さんもお気に入りなんだけど、この2人だけは特別。
あまりに好きなので私はつい



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