秘密の日記を見ませんか?〜お母さんの場合〜


秘密の日記を見ませんか?
〜お母さんの場合〜



私は人様に名乗れるほど立派な者ではありません。神崎家当主の妻という人形であり、愚かな母です。
娘を守れず姉に任せ、安穏と生きているさもしい女なのです。
七海を愛してやれない分、せめて七瀬だけでもと思っていました。
しかしその七瀬もまた、肺を病魔に蝕まれているのです。
ああ、神様。
どうか私から七瀬まで奪わないでください……。

そう願っていたある日、私は七瀬のお見舞いに行きました。
ところが七瀬はぐっすりと眠っていたため、寝顔を見るだけにしようと思ったのです。
ところが七瀬のベッド脇の棚に一冊のノートを発見してしまったのです。
勉強のノートかしら? そう思って私は何気なくそれを開いてしまいました。
ああ! 何て事でしょう、私は悪い母親です。
なぜならそのノートは七瀬の日記だったのですから。
いかに母とはいえ、子のノートを覗き見るなどあってはならない事。
すぐさま日記を閉じようと思いました、心から、思いました。
しかし、私は七瀬にどう思われているのだろうという疑問……その答えが解るかもしれない誘惑。
恐る恐る、私は、日記の文字に目を通し始めてしまったのです。



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