秘密の日記を見ませんか?〜お母さんの場合〜
私は人様に名乗れるほど立派な者ではありません。神崎家当主の妻という人形であり、愚かな母です。
そう、愚かです。もしあの時、七海を手放したりしなければ……こんな事にはぁぁぁっ!!
外界を知らない七海はきっと、離れの中で無邪気な子供のまま成長していると思っていたのに、
これは、いったい、何なのでしょう?
どうやら七海は、鷹宰学園という所に、七瀬のフリをして編入し、慎吾という人と同棲するようです。
同棲……慎吾という人の家に泊まるのでしょうか? それとも寮?
しかもこんな、七海まで何と破廉恥な。
しかも姉は七海に抱きついたりキスしたり一緒にお風呂……何て羨ましい!
本来なら姉にとっても娘同然の七海を可愛がっているのだろうと思うのですが、
姉の不審な動きを察知しつつある今、七海に対しても下心があるように思えてなりません。
私は七海の日記を閉じ、頭を抱え込みました。
ああ、やはりあの時、七海を手放すべきではなかった。
七海と七瀬を連れて神崎家を捨てていれば――いえ、そんな事、私にできるはずがありません。
それに子供達に悪い影響を与えているのは、夫ではなく、私の実姉なのですから。
ふと、視界の中に奇妙な文字列。
温子ちゃんのトキメキ☆ダイアリー 73冊目
………………………………言葉の意味を理解するのに、時間を要しました。
なぜこんな文字が私の前に?
疑問に思い頭を上げると、それは先ほど読んだ七海の日記の隣にあったノートの表紙でした。
そういえば座卓の上にはノートが二冊。一方は七海の日記、もう一方は姉の日記?
なぜこんな所に――七海の部屋に――七海は姉の日記を――?
毒を食らわば皿まで。
姉がいったい何を考え、何を思って子供達に接しているのか。
禁断の扉の向こうに何があるのか。
私は姉の日記を開きました。